※本記事の価格・交通情報は2026年3月時点のものです。渡航前に公式サイトで最新情報をご確認ください。

スタジアムが呼んでいる

「Thunderstruck」のイントロが70,000人の頭上で炸裂し、天井が赤と白に明滅する。画面越しでは伝わらない空気の振動がある。リヤド・エア・メトロポリターノでの現地観戦は、アトレティコ・デ・マドリードを理解する最短ルートだ。このガイドでは、渡航計画からスタジアム内の過ごし方まで、初めての観戦に必要な情報をすべてまとめた。

試合日程を確認し、渡航計画を立てる

アトレティコの公式サイト(atleticodemadrid.com)で試合日程を確認するところから始まる。ラ・リーガは通常8月〜5月。チャンピオンズリーグのリーグフェーズは9月〜1月にかけて行われる。

ラ・リーガの試合は金曜〜月曜に分散して組まれ、スペイン時間で14:00〜21:00が主な時間帯になる。日本時間に換算すると、最も早いキックオフで土曜22:00ごろ、最も遅い21:00開始の試合は翌朝の早朝5:00前後。帰国後の体力回復も含めたスケジュールを組んでおきたい。なお、確定したキックオフ時刻は試合の約2週間前に発表されるため、渡航計画はある程度の柔軟性を持たせておくのが賢い。

航空券はSkyscannerやGoogle Flightsでの検索が定石。日本からマドリードへの直行便はないが、パリ、フランクフルト、イスタンブールなどヨーロッパの主要都市で乗り継ぐ便が一般的で、所要時間は乗り継ぎ含めて約16〜20時間。早めの予約が価格を左右する。

ホテルはマドリード中心部のソル(Sol)周辺がおすすめだ。スタジアムへの地下鉄アクセスが良く、観光の拠点にもなる。Booking.comやExpediaで予約できる。

チケットを購入する

チケットは公式サイト(atleticodemadrid.com)で購入するのが基本だ。公式パートナーのentradas.com(futbol.entradas.com)でも同じ試合のチケットが買えるが、以下では公式サイトの手順を説明する。非公式の転売サイトには偽チケットのリスクがあるので避けること。

公式サイトでの購入手順は以下の通り。まず公式サイトのナビゲーションバーから「TICKETS」を選び、カテゴリ一覧が表示されたら「Men's first team」(スペイン語表示なら「Primer equipo masculino」)をタップ。次に「General Admission」(一般チケット、スペイン語では「Entrada general」)を選ぶと、購入可能な試合の一覧が表示される。希望の試合の「BUY TICKETS」をタップすると、スタジアムの俯瞰マップが現れる。

ここでログインを求められるが、「Continue as a guest(ゲストとして続行)」を選べば会員登録なしで購入を進められる。

座席選択は3段階で進む。最初にエリアを選ぶ。South End(Fondo Sur / 南スタンド)、North End(Fondo Norte / 北スタンド)、East Side(Lateral Este / 東スタンド)、West Side(Lateral Oeste / 西スタンド)の4つで、それぞれ残席数と最安価格が表示される。エリアをタップするとブロック一覧が出るので、希望のブロックを選択。最後に3Dビューで個別の座席を直接タップして確定する。

座席を確定するとカートに入り、約10分のカウントダウンが始まる。時間内に決済まで完了しないと座席が解放されるので、個人情報は事前に手元に準備しておきたい。

個人情報入力画面(Buyer data)では、Name(名)、Surnames(姓)、Second surname(第2姓)、身分証明書の種別と番号、メールアドレス、電話番号、生年月日、国、郵便番号、国籍を入力する。「Second surname」は「Optional(任意)」と明記されているため、日本人は空欄のまま進めてよい。続く「Attendee data(入場者情報)」画面ではName、Surnames、IDのみ入力し、利用規約に同意して「Pay」で決済に進む。支払いはクレジットカード。購入完了後、デジタルチケットが発行される。入場方法はApple Wallet / Google Wallet(NFC)、QRコード、PDFチケット(モバイル画面表示)に対応している。Walletに追加できない場合の具体的な手順は、購入時の確認メールまたは公式アプリ内の案内に従うこと。メトロポリターノは2025-26シーズンからデジタル入場を採用しており、スマートフォンの充電は必ず十分にしておくこと。

なお、Fondo Sur Grada Baja(南スタンド下層 / Grada de Animación)のチケットはクラブ会員(ソシオ)限定販売で、記名式(Nominativa)かつ譲渡不可。入場時にDNI(身分証明書)の提示が求められる。一方、同じFondo SurでもGrada AltaやGrada Mediaは一般販売の対象となっている。

チケット価格は対戦カードによって大きく変動する。通常のリーグ戦なら30〜70€程度の席も見つかるが、バルセロナ戦やレアル・マドリード戦などのビッグマッチではGrada Alta(3階席)でも60〜90€以上になり、Lateral(サイドスタンド)は140€超えも珍しくない。別途、手数料(Fees)が数ユーロ加算される。

チケットの一般販売は試合の1〜2週間前に開始されることが多い。会員優先販売がそれに先行するため、人気カードでは一般販売時点で良い席が残っていない場合もある。公式サイトで通知登録(Avísame)が利用できる場合があり、発売開始を見逃さないために活用したい。

リヤド・エア・メトロポリターノの収容人数は約70,000人。うち約61,000席がシーズンチケット保有者で埋まるが、一般販売のチケットは多くの試合で比較的入手しやすい。ただし、レアル・マドリード戦やバルセロナ戦などのビッグマッチは早めに動く必要がある。

割引を受けたい場合は、海外ファン向けの公式メンバーシップ「Atleti Red & White」に加入する手がある。年会費20€で、公式オンラインストア割引、ウェルカムキット、48時間のチケット優先購入アクセスのほか、限定特典も用意されている。

スタジアムへのアクセス

リヤド・エア・メトロポリターノはマドリード中心部から北東約10km、バラハス空港の近くに位置する。

最も便利なのが地下鉄だ。最寄り駅は7号線「Estadio Metropolitano駅」で、ホームを出ればスタジアムは目の前。ソル駅からの場合、もっともシンプルなルートは2号線でCanal駅まで行き、7号線に乗り換えるパターンで、乗り換え込みの所要時間は約40〜50分になる。

地下鉄の切符はICカード式の「Tarjeta Multi」にチャージして使う。カード本体は初回購入時に2.50€。10回券はマドリード州(Comunidad de Madrid)の交通割引措置(2026年12月末まで延長中)により7.30€(1回あたり0.73€)で、通常定価の12.20€から大幅に割引されている。ツーリスト・カード(Zone A 1日10€〜)なら地下鉄・バス・近郊鉄道が乗り放題になるので、滞在中の移動が多い場合はこちらも検討に値する。地下鉄にダイヤはないが4〜5分間隔で運行しており、東京の地下鉄と同じ感覚で乗れる。通常の終電はAM1:30だが、試合日は増便・延長運行されることが多い。

知っておきたい裏技がある。試合後のEstadio Metropolitano駅は大混雑する。クラブ公式も代替駅として案内しているのが、2号線「Las Rosas駅」と5号線「Canillejas駅」だ。いずれもスタジアムから徒歩15〜20分。特にLas Rosasは2号線の始発駅なので座れる可能性が高く、ソル駅やオペラ駅へ乗り換えなしで直行できる。混雑の中でEstadio Metropolitano駅の列に並ぶよりも、トータルの帰宅時間が短くなることさえある。体力に余裕があれば断然おすすめだ。

スタジアムでの過ごし方

入場開始は試合の約1時間前。チケットに記載されたゲート番号を確認して進もう。入場時にはボディチェックと荷物検査がある。荷物は軽めに。公式規定では500g以上の物体(ボトル飲料や固形食品を含む)の持ち込みが禁止されているため、飲食物は場内で購入するのが基本だ。小さなペットボトルの水はフタを外した状態で黙認されるケースもあるが、規定上は持ち込み不可であることを知っておきたい。

スタジアム内には700㎡のメインキッチンと、各エリアに配置された6箇所のキッチンがある。バーガー、オリーブ、ナッツ、ポップコーンなど軽食が中心。スペインではサッカースタジアムの一般観客エリアでのアルコール販売が法律で禁止されているため、場内の売店で買えるのはノンアルコールビールのみになる。アルコール入りのビールを飲みたい場合は、スタジアム外周(セキュリティゲートの外側)にある「ブリンディス(Brindis)」へ。ゲート46付近に位置するビアバーで、タンクビールと軽食が楽しめる。チケットがなくても利用でき、大型スクリーンで試合も観られる。試合前にここで一杯やってから入場するのが地元流だ。

試合開始直前、場内が暗転する。天井の1,600万色LEDが赤白に明滅し、AC/DCの「Thunderstruck」が大音量で叩きつけられる中、選手紹介が始まる。メトロポリターノの名物演出だ。映像では伝わらない空気の震えがある。これだけでも現地に来た価値がある。

覚えておきたいチャントとスペイン語

現地観戦の没入感を上げるために、3つのチャントを予習しておきたい。

まずは「イムノ(Himno)」。アトレティコの公式アンセムで、試合中に何度も歌われる。YouTubeで「Himno Atletico Madrid」と検索すれば歌詞付き動画が見つかる。次に「Ole Ole Ole Cholo Simeone♪」。シンプルなメロディで覚えやすく、試合中に繰り返し沸き起こる。そして「Te quiero Atleti lololo〜♪」。「アトレティ、愛してるよ」という意味だ。「lololo〜」の抑揚に少し練習がいるが、70,000人の声に囲まれれば自然と身体が動く。

スペイン語は4つだけ覚えればいい。「Hola(オラ)= こんにちは」「Gracias(グラシアス)= ありがとう」「Perdón(ペルドン)= すみません」「Sí / No(スィ / ノー)= はい / いいえ」。セキュリティの前で笑顔の「Hola!」ひとつで、空気はまったく変わる。

マドリードで食べるべきもの

試合前後の食事も現地観戦の醍醐味だ。マドリードのバルでは手頃な価格でタパスとお酒が楽しめる。

真っ先に試してほしいのがボカディージョ・デ・カラマレス(Bocadillo de Calamares)。イカリングのフライをバゲットに挟んだ、マドリード発祥の名物サンドイッチ。プエルタ・デル・ソル周辺のバルで手軽に食べられる。冬場ならコシード・マドリレーニョ(Cocido Madrileño)もおすすめだ。ひよこ豆と肉、野菜をじっくり煮込んだマドリードの郷土料理で、スープ、具材、肉類と3段階に分けて食べるのが伝統的な作法。シーフードが好きなら、バレンシア発祥だがマドリードのレストランでも広く楽しめるアロス・ネグロ(Arroz Negro)も候補に入る。イカ墨で炊いた真っ黒な米料理で、見た目のインパクトに反して味は繊細だ。

メトロポリターノに行く理由

チケットの買い方、乗り換えのコツ、覚えるべき4つのスペイン語。ガイドとして並べた情報はこれで全部だ。だが現地で受け取るものは、情報の総和を超える。70,000人の「Thunderstruck」を浴びた瞬間、このクラブがなぜ「苦しみの中で立ち続ける」ことをアイデンティティに掲げるのかが、言葉ではなく空気で伝わる。メトロポリターノは、アトレティコを体感するための場所だ。

今日のチョリスモ実践
「いつか行きたい」を「いつ行くか」に変える。メトロポリターノの70,000人の歓声は、画面の向こう側にいる限り永遠に"いつか"のまま。航空券の相場を1回検索するだけでも、夢は「計画」に変わる。今日、Skyscannerを開いてみよう。