国境を越えても、パスポートの扱いはリーグごとに違う
2025年5月30日、レアル・マドリードがトレント・アレクサンダー=アーノルドの獲得を発表した。6年契約、2031年まで。リヴァプールでの功績を携えた26歳のイングランド人は、ラ・リーガではある分類のもとに置かれることになる。非EU選手だ。
Brexit以降、イングランド出身の選手はEU域内のリーグにおいて「非EU選手」として扱われる。アレクサンダー=アーノルドは、レアル・マドリードの非EU枠3つのうち1つを消費する形で登録された。レアル・マドリードでは、2022年までにヴィニシウス・ジュニオール、エデル・ミリトン、ロドリゴの3選手がスペイン国籍を取得しており、非EU枠には空きがあった。登録そのものに支障はなかったが、英国籍であること自体が枠を消費するという事実は残る。同じ英国人でも、ジュード・ベリンガムは事情が異なる。父方の祖母を通じてアイルランドのパスポートを取得し、EU選手として登録された。枠を消費しない。
もしアレクサンダー=アーノルドがセリエAのクラブに移籍していたら、この枠の消費は発生しなかった。イタリアサッカー連盟は2023年7月、英国籍とスイス籍の選手をEU選手と同等に扱う特例を導入している。ラ・リーガにはスイス籍選手をEU扱いとする措置はあるものの、英国籍選手に対する同様の特例はない。同じ選手が、リーグの制度設計によって異なる扱いを受ける。5大リーグの非自国選手ルールは、それぞれ独自の論理で構築されている。
5大リーグの非自国選手ルール: 3つのアプローチ
欧州の主要リーグは、非自国選手の登録・出場をどう管理するかという問いに対して、大きく異なる回答を出してきた。便宜的に「国籍による直接制限」「育成地ベースの間接制限」「獲得数と育成要件の複合」という3つのアプローチに整理できる。ただし、各リーグはこれらの要素を組み合わせており、きれいに一分類で収まるわけではない。主要な制度上の特徴に基づいた整理として読んでほしい。
最も明快なのは、国籍を基準に人数を直接制限するやり方だろう。ラ・リーガとリーグ・アンがこの型に該当する。
ラ・リーガでは、EU・EEA・協定国以外の国籍を持つ選手について、クラブあたり登録上限が5名、試合日の登録メンバーに含められるのは最大3名と定められている。「登録」と「出場」の二層構造になっている点がこの制度の特徴だ。EU国籍の選手には一切の制限がない。コトヌー協定に基づき、アフリカ・カリブ海・太平洋のACP諸国出身の選手はEU扱いとなる。同協定は2023年に失効し後継のサモア協定に移行したが、スポーツ分野での実務的な取り扱いは現時点でも維持されている。加えて、ユーロ地中海協定の対象国(モロッコ、チュニジア、アルジェリアなど)やSAA(安定化・連合協定)の対象国(セルビア、北マケドニアなど)、さらにウクライナやトルコの選手もスペインではEU扱いとされる。これらの協定の適用範囲を考えると、「非EU」に実質的に該当するのは南米、アジアの一部、そしてBrexit以降の英国籍選手に限られる。セグンダ・ディビシオンでは非EU枠は2名に縮小され、3部以下では非EU選手の登録自体が原則として認められていない。
リーグ・アンも国籍を基準とした直接制限を採用しており、EU・EEA・協力協定締結国以外の国籍を持つ選手について、登録できる上限は4名だ。フランスはアフリカの旧植民地との歴史的つながりが深く、リーグ・アンにはアフリカ出身の選手が多い。コトヌー協定(後継サモア協定)はACP諸国の選手をEU扱いとするため、アフリカ出身の選手の多くがこの免除の恩恵を受ける。結果として、リーグ・アンでは4名という登録上限が実際に制約として機能する場面は限定的なものになっている。
これとは対照的なのが、プレミアリーグの育成地ベースの間接制限だ。プレミアリーグには非EU選手の人数を直接制限するルールがない。代わりに、25名の登録メンバーのうち最大17名が「非ホームグロウン」、裏を返せば最低8名をホームグロウン選手で埋める必要がある。ここでの「ホームグロウン」は国籍を問わない。21歳になるシーズンの終了時までにFA(イングランドサッカー協会)またはFAW(ウェールズサッカー協会)加盟クラブで通算3シーズン以上登録されていれば、外国籍でもホームグロウンとして扱われる。逆に、英国籍であっても育成期を国外で過ごせば該当しない。U21の選手は登録枠の対象外で、人数制限を受けない。
セリエAとブンデスリーガは、獲得数の制限と育成要件を組み合わせた複合型といえる。セリエAは非EU選手の総保有数に上限を設けていないが、毎シーズン新たに登録できる非EU選手の数を2名に制限している。2024年夏の規則改定で、それまで課されていた既存非EU選手の放出を条件とするルールが撤廃され、入れ替えなしでの獲得が可能になった。25名の登録メンバーのうち8名はイタリア国内で育成された選手、うち4名は自クラブのアカデミー出身であることが求められる。前述のとおり、英国籍とスイス籍の選手をEU扱いとする特例は、Brexit後の対応としてラ・リーガとは対照的な判断だった。
ブンデスリーガは非EU選手の人数を直接制限していない。登録メンバーに最低12名のドイツ国籍選手を含めること、さらにユース育成選手を8名(うち4名は自クラブ、4名は同一協会内の他クラブ出身)登録することが義務づけられている。12名のドイツ人要件は国籍による直接制限の要素を含んでおり、純粋な育成地ベースの制度とは性格が異なる。とはいえ、非EU選手の受け入れという観点では、5大リーグの中で最も門戸が広い制度だといえる。
ラ・リーガはなぜこの制度を選び、維持してきたのか
ラ・リーガの非EU枠制度には、スペインサッカーの歴史が折り重なっている。
フランコ政権下のスペインでは、外国人選手の獲得が厳しく制限された時期があった。1973年に外国人選手枠が限定的に復活した。この年にヨハン・クライフがバルセロナに移籍したことは象徴的なエピソードとして語り継がれている。その後、枠は段階的に拡大され、ボスマン判決前には外国人選手枠は3名となっていた。
転換点は1995年のボスマン判決だった。EU域内の労働者の自由移動を根拠に、EU国籍選手を「外国人」としてカウントすることが禁じられた。これにより、制度の性質が根本的に変わる。「外国人枠」は「非EU枠」へと再定義された。2003年のコルパク判決は、EU連合協定締結国の国民に対し、EU域内での労働上の非差別原則を確立した判例だ。この判決の論理を踏まえ、コトヌー協定に含まれる非差別条項もスポーツ分野で適用されるようになった。コトヌー協定はEUとACP諸国の間の包括的パートナーシップ協定であり、その中の労働条件に関する非差別条項がコルパク判決の原則と結びつくことで、ACP諸国出身の選手がスペインなどでEU扱いとなる道が開かれた。北アフリカやバルカン諸国にも、それぞれの協定を通じて同様の措置が広がった結果、「非EU」に該当する選手の出身地域は実質的に限られたものになった。
この制度が長年にわたって維持されてきた背景には、自国の育成システムへの投資を構造的に促す意図がある。枠が限られるからこそ、クラブはカンテラ(下部組織)や若手の育成に投資することが合理的な選択であり続ける。制度は、市場の開放ではなく育成への回帰を促す設計思想に基づいている。
3枠がもたらしたもの
この制度がラ・リーガにもたらした効果は、数字に表れている。ラ・リーガが2025年10月に発表した分析によると、リーグ所属クラブのホームグロウン選手の市場価値は合計14.6億ユーロ。プレミアリーグの約10.7億ユーロ、ブンデスリーガの約9.6億ユーロを大きく上回り、欧州5大リーグで最高の数字だった。出場時間に占めるホームグロウン選手の比率も19.8%で、プレミアリーグの6.4%やセリエAの5.5%と比較すると際立っている。
移籍市場でも育成の成果は明確だ。ラ・リーガ出身の育成選手が生み出す移籍収入は、リーグ全体の移籍収入のうち45%を占める。5年前には27%だった。レアル・マドリードとバルセロナを除いても43%前後で推移しており、一部のビッグクラブに偏った傾向ではなく、中小クラブを含めた構造的な現象だ。スペイン各年代の代表チームが2014年から2024年の間に国際大会で16のタイトルを獲得したことも、育成の厚みを示す指標の一つだろう。
ただし、枠の制限と育成の成功を直線で結ぶのは慎重であるべきだ。フランスは非EU選手の制限がラ・リーガより緩いにもかかわらず、世界有数の育成力を誇る。指導体制、アカデミーへの投資、人口構成、移民社会の厚み。育成の成功は複合的な要因によるものであり、非EU枠がその一因になり得ることは確かだが、唯一の要因として因果関係を断定することはできない。
裏を返せば、この制度には明確な制約もある。非EU圏に有望な若手が現れたとき、プレミアリーグやブンデスリーガのクラブと比べて、ラ・リーガのクラブは構造的に不利な立場に置かれる。南米やアジアの逸材を獲得したくても、枠が埋まっていれば手が出せない。
その結果として広がったのが、国籍取得による枠の管理だ。レアル・マドリードでは、ヴィニシウス・ジュニオール、エデル・ミリトン、ロドリゴの3選手が2022年までにスペイン国籍を取得し、非EU枠を空けた。スペインの法律では、イベロアメリカ諸国、ポルトガル、アンドラ、フィリピン、赤道ギニアなどの出身者は、2年間の合法的な居住でスペイン国籍の取得申請が可能になる。この制度上の特例が非EU枠の厳しさと組み合わさり、独自のエコシステムを形成している。制度本来の目的である育成促進と、実際の運用における国籍取得への依存の間には、一定の緊張関係がある。
枠に入れない非EU選手をローンに出す対応が構造的に発生する点も見逃せない。クラブは戦力として評価している選手を、枠の都合で他チームに貸し出さざるを得ない場面がある。育成と保有の計画に歪みをもたらす要因になりうる。
制度の向こうに見える移籍市場
5大リーグの非自国選手ルールは、それぞれのリーグの歴史、市場環境、文化的な背景から形成されてきた。プレミアリーグの育成地ベースの開放性、セリエAがBrexit後に見せた柔軟な対応、ブンデスリーガの門戸の広さ、リーグ・アンと旧植民地との結びつき。どのリーグも、単なる規制ではなく、自国のサッカーが何を守り何を開くかという判断の集積によってルールを形作っている。
ラ・リーガは、厳しい制約の中から育成文化を構造的に育ててきた。その代償として、非EU圏の才能を取り込む柔軟性には限界がある。制度に正解はなく、それぞれのリーグが異なるトレードオフを引き受けている。
アトレティコ・デ・マドリードの移籍市場を追いかけるとき、獲得候補の名前だけでなく、その選手の国籍とパスポートの構成が話題になることがある。2026年冬にクラブが獲得したアデモラ・ルックマンは、ロンドン生まれで英国籍も保有するナイジェリア代表だ。ナイジェリアはACP諸国に含まれるため、非EU枠を消費しないとされる。同じ冬に加入したオベド・バルガスはメキシコ代表だが、母親のスペイン国籍を通じてスペインのパスポート取得が見込まれており、非EU枠を消費しない見通しだ。戦力評価の裏には、常にこうした制度上の力学が作用している。
ラ・リーガのクラブの獲得や売却の噂を見かけたとき、その背景に非EU枠の制約がないか想像してみてほしい。制度を知ることは、移籍市場の動きを一段深く読み解く手がかりになる。