ラージョ
3 - 0
アトレティコ
⚽ 40' フラン・ペレス / 45' O.バレンティン / 76' N.メンディ
🟨 カルドソ(29')、メンドーサ(52')、ジョレンテ(70')

試合概要

バルセロナを4-0で粉砕したコパ・デル・レイ準決勝第1戦から中2日。シメオネはスタメンを9人入れ替えて、試合前時点で降格圏の18位だったラージョ・バジェカーノに臨んだ。結果は完敗。ラージョにとって実に13年ぶりのアトレティコ戦勝利であり、27年間でわずか2度目の勝利だった。

舞台はラージョのホーム・バジェカスではなく、レガネスのブタルケ。ラ・リーガがバジェカスの芝を「プレー不可能」と判断したためだ。観客はわずか5,335人。ラージョのウルトラス「ロス・ブカネロス」がオーナーのラウル・マルティン・プレサに対するボイコットを呼びかけたこともあり、スタンドには空席が目立った。だが、ピッチの上ではラージョが圧倒的だった。

ボール保持率はアトレティコの59%に対しラージョは41%。にもかかわらず、xGはラージョ1.61 vs アトレティコ0.70。シュート数13対9、ビッグチャンスに至っては6対1。数字が雄弁に物語っている──ボールを持っていたのはアトレティコだが、試合を支配していたのはラージョだった。

直近リーガ3試合で獲得した勝ち点はわずか1(0-1ベティス、0-0レバンテ、0-3ラージョ)。首位レアル・マドリードとの差は15ポイントに広がり、ビジャレアルにも抜かれて4位に後退した。

ラージョの爪──90分間途切れなかったハイプレスとドリブラーの牙

この試合のラージョは、降格圏のチームとは思えない質の高さを見せた。前線からのプレスは90分間途切れることがなく、攻守両面において高い完成度を示した。

とりわけ脅威だったのがドリブラーたちのバイタルエリアへの侵入だ。右サイドバックのアンドレイ・ラティウは40分、複数のステップオーバーを織り交ぜたドリブルでバイラインまで切り込み、折り返しをフラン・ペレスが合わせた。この突破でルッジェーリは完全に置き去りにされた。

45分の2点目はラングレの致命的なミスから生まれた。ラングレが18ヤード付近でボールを失い、その流れからイリアス・アコマチがカットバック、イシ・パラソンのシュートをオブラクが弾いたところにオスカル・バレンティンが詰めた。オブラクのキャッチミスが絡んでいるが、そこに至るまでの崩し──そしてラングレのボールロストという起点──が2点目の本質だった。

76分の3点目はショートコーナーの流れから。グンバウがコーナーキックを短くつなぎ、受けたアルバロ・ガルシアがクロスを上げると、ノベル・メンディが最高打点でヘッドを叩き込んだ。試合を完全に決める一撃だった。

Reuters通信の試合後の描写が象徴的だ──終盤、ラージョの選手たちがパスを回すたびにスタンドからは「オレー!」の声が響いた。降格争いのチームが、リーグ4位のチームを相手に、である。

「試合を選ぶな」──オブラクの反乱と、シメオネの冷静な反論

試合後、オブラクはピッチ上でのインタビューで厳しい言葉を口にした。

「リーガを放棄してしまったように見える。こういう試合を落としてはいけないし、こういうプレーをしてはいけない」

「試合を選ぶことはできない。すべての試合に勝つためにプレーしなければならない。勝ちに行く姿勢で臨んだが、連勝するためのメンタリティが整っていない。それ以外に説明のしようがない」

シメオネは記者会見でこれに正面から反論した。

「オブラクの言ったことには同意しない。チームは試合を選んでいない。パフォーマンスが悪かっただけだ。相手がより良いプレーをすれば、相手が勝つ。それだけのことだ」

「インテンシティの問題だとよく言われるが、そうではない。インテンシティ、勝利への意欲、アティチュード……そうした話ではなく、単にプレーの質が悪かった。パスが悪く、クロスが悪く、ファーストフェーズの組み立てで前進できなかった。相手のほうが良いプレーをし、決定的だった」

この師弟間の公開対立は、チーム内の緊張を表面化させたものとして注目に値する。Into the Calderónの報道によれば、オブラクの年俸は2,000万ユーロ。一方、コパ・デル・レイではフアン・ムッソが好パフォーマンスを続けており(バルセロナ戦FotMob 8.8)、守護神の座をめぐる議論が再燃する可能性もある。

筆者の見方としては、オブラクの発言には選手としての正直な危機感がにじんでいる一方、シメオネの反論にも合理性がある。レアル・マドリードと15ポイント差の現状でリーガに全力を注ぐことが本当に最適解なのか、それともコパとCLに集中するのが現実的なのか──この問いに正解はない。ただし、9人の入れ替えという判断が「二軍のクオリティ」を残酷なまでに可視化してしまったことは事実だ。

バリオスの不在が可視化したもの──プレス回避能力の構造的欠陥

この試合が炙り出したのは、パブロ・バリオスの不在がチームのビルドアップに与える影響の大きさだ。

バリオスは負傷で欠場中だったが、バルセロナ戦ではジョレンテがその穴をボックス・トゥ・ボックスの運動量と9回のボール回収で見事に埋めた。しかし今回、そのジョレンテは温存で先発から外れた。メンドーサとカルドソの中盤コンビでは、ラージョのプレスに対してまったく前進できなかった。

シメオネ自身がこう認めている。

「最初のフェーズで前進できなかった。トランジションもなければ、良いパスも、良いクロスもなかった」

ラージョのプレスはアトレティコの最終ラインに時間を与えず、ボールの出し所を消し続けた。バリオスがいればプレスの間でボールを受けて前線に展開できるが、この日の中盤にはその能力を持つ選手がいなかった。アルマダがフリーロールで多少の推進力を見せた(キーパス3本)のが唯一の救いだった程度だ。

カルドソのイエロー──前半半ばの足枷

ジョニー・カルドソは前半29分にアコマチへの不用意なファウルでイエローカードを受けた。Into the Calderónは「ボールを素早く奪い返してアルマダやバエナに渡そうとしていた」と評しつつも、「不必要なフリーキックを与えた」と指摘している。

このイエローが以後のプレーに与えた影響は小さくない。2枚目を恐れてプレス強度を上げられず、中盤の制圧力がさらに低下した。結果的にメンドーサも52分に別のファウルでイエローを受け、次節エスパニョール戦を欠場することになる。

判定の妥当性には議論の余地があるが、いずれにせよ、入れ替え後の中盤に「カード1枚もらったら終わり」という脆さが潜んでいたことは間違いない。

GKが最高評価になる試合は危険信号

直近のアトレティコのリーガ成績を俯瞰すると、不穏なパターンが浮かび上がる。

ベティス戦(0-1敗戦)ではオブラクが複数のセーブで失点を最小限に抑えた。レバンテ戦(0-0)でも再び守備の奮闘でかろうじてドローに持ち込んだ。コパではムッソがバルセロナ戦でFotMob 8.8、ベティス戦でも高評価を記録している。

GKがチーム最高評価を取る試合とは、すなわち「他のポジションの選手がGKの仕事を大量に生み出している」ことの裏返しだ。攻撃が機能せず、守備に負担が集中し、GKの好セーブだけが光る──これは持続不可能な構造であり、チームとして何かがうまくいっていないことの明確なシグナルである。

この日のラージョ戦ではオブラクのItC評価は3と低かったが、それは3失点という結果が反映されたもので、パフォーマンスの全体像を正確には映していない。2失点目のキャッチミスは批判に値するが、チーム全体がラージョのプレスに屈している状況で、GK一人に責任を帰すのは酷だろう。

5,335人のブタルケ──バジェカスの「不在」が映した構造問題

この試合の背景には、ラージョ・バジェカーノというクラブが抱える構造的な問題がある。

ラ・リーガは前節のレアル・オビエド戦をピッチ状態不良で延期し、今節はレガネスのブタルケに会場を移した。ラージョの選手とスタッフは今季、AFE(スペインサッカー選手協会)と共同で「使用不能なピッチ」「練習場の老朽化」「シャワーの温水が出ない日がある」といった環境問題を公に訴えている。

得点のたびにスタンドでは歓喜ではなく「プレサ、出ていけ!(Presa, vete ya!)」の大合唱が起きた。5,335人しかいない空間で、それは異様な迫力を持っていた。

ピッチの上では降格圏のチームが、リーグ4位のチームを3-0で叩き潰した。しかしピッチの外では、そのクラブの存続基盤そのものが揺らいでいる。勝っても喜べない、勝利が抗議の道具になる──スペインの小クラブが抱えるオーナーシップ問題の縮図がそこにあった。

プレーヤーレーティング

選手ItC寸評
オブラク3.03失点。2失点目はキャッチミスが絡む。試合後発言が波紋
モリーナ4.0バルセロナ戦の推進力は影を潜めた。右サイドの攻撃に厚みなし
ヒメネス5.0体を投げ出して2点目を防ごうとした姿勢は称賛に値する
ラングレ2.018ヤード付近でボールロスト→2失点目に直結。最低評価
ルッジェーリ3.0ラティウに翻弄され、1失点目の起点を許した
アルマダ5.5キーパス3本。自由に動き回りチーム唯一の攻撃的光明
メンドーサ3.5イエローで次節欠場。ビルドアップで前進できず
カルドソ3.5前半29分のイエローが足枷に。プレス回収の意識は見えたが不発
バエナ3.5序盤の積極性は早々に消失。決定機創出なし
ニコ3.01失点目でボールウォッチング。クロスは数本入れたが不十分
ソルロート2.0シュート0本。存在感なし。ラングレと並ぶ最低評価

交代

選手ItC寸評
ル・ノルマン5.056分〜(←メンドーサ)。複数クリア。パスの質も安定
バルガス4.056分〜(←ルッジェーリ)。ボールを前に運ぼうとしたが試合に入り切れず
アルバレス4.056分〜(←バエナ)。攻撃のスイッチにはなれなかった
ジョレンテ3.063分〜(←カルドソ)。投入直後の70分にイエロー。3失点目でメンディに空中戦で敗れる
ルックマン4.063分〜(←ラングレ)。攻撃面で見せ場なし

※ Into the Calderón(ItC)編集部による主観評価。10点満点。FotMobレーティングは本試合について部分的にしか取得できなかったため、今回はItC評価のみ掲載しています。両データが揃う試合ではバルセロナ戦と同様に二軸で掲載します。

今後の課題──2つの問い

ローテーション戦略の再考

9人入れ替えは過度だったのか。中2日という日程、3日後のCLブルージュ戦を考えれば、主力温存の判断自体は理解できる。しかし結果として「控え組のクオリティ不足」を13年ぶりの敗戦という最悪の形で露呈させてしまった。シメオネが言うように「20〜22人全員で戦わなければならない」のなら、控え組に試合で勝てるだけの連携と質を日常的に担保する仕組みが必要だ。Into the Calderónがバルセロナ戦後に指摘した「ラングレとヒメネスは余剰戦力」という評価は、この試合で残酷に証明された。

リーガの位置付けをどう定義するか

首位レアル・マドリードと15ポイント差。残り14試合でこの差を逆転するのは事実上不可能に近い。コパ・デル・レイ準決勝とCLプレーオフを抱える中で、リーガにどれだけのリソースを割くのか──4位死守と来季CL出場権確保を最低ラインとしつつ、カップ戦に集中するのが現実的な戦略だろう。だが、オブラクの「リーガを放棄したようだ」という言葉が選手の本音を代弁しているのだとすれば、ロッカールームの一体感が崩れるリスクも無視できない。

出典: ESPN, Reuters, Into the Calderón, FotMob (Opta), WhoScored, beIN Sports, La Liga公式, Yahoo Sports