自壊が生んだ逆転負け
合計xGは2.42対1.00。数字だけ見ればマドリーの圧勝に映るが、2.42のうちPKが0.79、セットプレーが0.88を占める。オープンプレーに限れば0.75対1.00。流れの中から圧倒されたわけではない。それでもアトレティコ・マドリードは3-2で敗れた。自ら差し出したものを、レアル・マドリードが確実に受け取った試合だった。
マドリーにとってはリーガでのダービー勝利が2022年9月以来、実に3年半ぶり。同日にバルセロナがラージョ・バジェカーノを1-0で下して一時7pt差に開いたが、マドリーの勝利で4pt差に戻った。アトレティコはビジャレアルに勝ち点1差で抜かれ、4位に後退している。
3-2という打ち合いの裏側で、アトレティコの3失点のうち2つは自陣から生まれた。ハンツコがブラヒムに与えたPK、ルッジェーリのルーズなバックパスとヒメネスのミスから奪われたバルベルデの一撃。崩されたというより、崩れた。4月を前にしたこのチームにとって、見過ごせない失点の仕方だった。
支配されながら刺す──前半のゲームプラン
マドリーは前半から主導権を握った。前半のポゼッションは64%対36%(FotMob)。ベルナベウの77,964人を背に、開始早々から圧力をかけ続けた。3分、マドリーがペナルティエリアまで持ち込んで最初のシュートを放ったが、ムッソが好セーブで弾いた。9分にはバルベルデが右サイドを駆け上がり、鋭いシュート。ボールはゴール左ポストに当たって跳ね返った。前半だけでマドリーはシュート10本。アトレティコの5本を大きく上回る。
20分には決定的な場面が訪れた。ヴィニシウスが6ヤードボックス内から至近距離でシュートを放ったが、ジュリアーノ・シメオネが身体を投げ出して2度にわたるゴールラインクリアで阻止した。この献身的な守備は、FotMob 8.6という高評価に直結する。アシストとゴールラインクリア2回。監督の息子は、この日ピッチの上で誰よりも多くの仕事をこなした。
マドリーの攻勢は明白だったが、アトレティコの守備が破綻していたわけではない。ジョレンテが右サイドバックの位置でヴィニシウスの対面を務めた前半、アトレティコの守備ブロックは組織的に機能していた。ヴィニシウスの突破が脅威に映った場面の多くは、ジョレンテのサイドではなく中央やファーサイドから生まれたものだ。ジョレンテとG.シメオネが連携して蓋をしている間、ベルナベウの圧力は得点に結びつかなかった。
そして33分、流れに逆らう一撃が生まれる。カウンターの起点となったルックマンは、リュディガーとカルバハルを前にしながらボールをキープし、左サイドをオーバーラップするルッジェーリの上がりを待った。ルッジェーリが低いクロスを入れると、G.シメオネがバックヒールでボールを流す。走り込んだルックマンが右足でゴール右下に流し込んだ。0-1。相手CBの前で時間を作り、味方の動き出しを引き出したルックマンの判断、そしてG.シメオネの技術が融合したカウンターだった。
「彼は成長を続けている。非常にハードワークし、攻守で異なるオプションを提供してくれている。まさにそれが我々が彼に求めているものだ」
ディエゴ・シメオネ、ルックマンについて(Into the Calderón)
マドリーはその後もギュレルのシュートやチュアメニのヘッドで攻め立てたが、前半はアトレティコの1-0で折り返した。ポゼッションとシュート数で圧倒されながらも、アトレティコはビッグチャンス2回を作り出していた。1-0というスコアは、内容を正確に映した数字とは言い難い。
52分から55分──3分間で消えたリード
ハーフタイムでル・ノルマンがピッチを退いた。体調面の問題が報じられている。代わって入ったのはホセ・マリア・ヒメネス。
52分。ハンツコがペナルティエリア内でブラヒム・ディアスに対応する際、バランスを崩して接触した。ItCは「ブラヒムが接触を大げさにした」と指摘しているが、主審はPKを宣告。ヴィニシウスがムッソの逆を突いて左に決め、1-1。
わずか3分後、55分。ルッジェーリが自陣ペナルティエリア内へ不用意なバックパスを送った。ボールを受けたヒメネスはダイレクトでパスを試みるが処理が甘く、バルベルデに奪われる。バルベルデは右足のアウトサイドでムッソを抜き、ゴールネットを揺らした。2-1。Reutersは「schoolboy error」と評したが、このプレーの起点はヒメネスの処理以前に、ルッジェーリが自陣の危険な位置に無意味なパスを送った判断にある。
バルベルデにとっては直近5試合で6ゴール目。好調な選手にこうしたプレゼントを渡せば、結果は決まっている。ルッジェーリに限った話ではないが、後ろ向きや横向きのパスで判断が甘くなる場面は今季繰り返し見られる。トッテナム戦でもヘタフェ戦でも似たような形があった。ビルドアップの途中で自らリスクを生み出すこの傾向は、1試合の問題ではなく構造的な課題だ。
30メートルの同点弾と、カットインの決勝点
57分、シメオネが動いた。3枚同時交代。ルックマンに代えてモリーナ、グリーズマンに代えてソルロート、カルドーソに代えてニコ・ゴンサレス。カルドーソは27分に受けたイエローがリーガ累積5枚目となり、次節のバルセロナ戦(4月4日、リーガ第30節)を出場停止で欠くことになった。バリオスとロドリ・メンドーサが負傷離脱中の中盤で、この欠場は痛い。
マドリーも63分にピタルチからエムバペ、64分にカルバハルからアレクサンダー=アーノルドへ交代。TAAについてはESPNが「練習遅刻によるスタメン落ち」を報じており、この日はベンチスタートだった。
66分、マドリーがリードを握ってからわずか11分で試合は振り出しに戻った。モリーナがアルバレスからボールを受け、約25ヤードの距離から右足を振り抜いた。シュートはゴール上隅に突き刺さり、ルニンは一歩も動けなかった。2-2。直前のヘタフェ戦に続き、2試合連続のペナルティエリア外からのゴール。57分に投入されてから9分。限られた出場時間の中で、モリーナは結果を出し続けている。
ベルナベウが静まったのは、ほんの一瞬だった。72分、投入から8分のアレクサンダー=アーノルドが右サイドでニコ・ゴンサレスを振り切り、対角線のパスを左サイドへ通す。受けたヴィニシウスがカットインからディフェンダーをかわし、右足で巻いたシュートを放った。ボールはファーポスト内側に吸い込まれた。3-2。直近11試合で10ゴール目とBBCは伝えている。FotMob 9.0。文句なしのマン・オブ・ザ・マッチだった。
スタメン落ちの選手が8分で試合を決定づけるパスを出し、9.0の評価を受けた選手がその仕上げを担う。マドリーのベンチの厚みが、均衡を一瞬で断ち切った。
数的優位を活かしきれなかった最終盤
77分、空気が変わった。バルベルデがバエナに対し、ボールへのチャレンジとは言い難い形で右足を刈り取った。主審ムヌエラ・モンテロの目の前。一発レッド。この日1ゴール1ポストの殊勲者が、ピッチを去った。
両者には因縁がある。2023年4月、リーガのレアル・マドリード対ビジャレアル戦後、ベルナベウの駐車場でバルベルデがバエナを殴打したとされる事件が起きている。刑事捜査は証拠不十分で打ち切られたが、両者の間に残ったものは消えていない。この日の退場について、プレーを見た瞬間は驚くかもしれない。ただ、ボールの関与が薄い位置で相手の足を正面から刈り取った内容を考えれば、妥当と判断する声が多いのも理解できる。
10人になったマドリーに対し、アトレティコは攻勢を強めた。81分、アルバレスがペナルティエリア外から放ったシュートがポストを直撃。あと数センチ内側なら同点だった。アディショナルタイムは6分。ソルロートがルッジェーリのクロスからヘディングで狙い、バエナがニコ・ゴンサレスのパスを受けてシュートを放ったが、いずれもルニンの壁を越えられなかった。
この試合のファウル数は2対15。イエローカードはマドリー1枚に対しアトレティコ4枚、レッドカードはマドリーに1枚。シメオネは会見で審判の判定基準について問われたが、話題をそらさなかった。
「そこには踏み込まない。試合に影響したとは思わないからだ。1-0のあとにもっとコントロールすべきだった。ミスを減らし、もっと上手く試合を管理できたはずだ。相手は質の高いチームで、少しでも隙を見せれば仕留めてくる」
ディエゴ・シメオネ(Into the Calderón)
審判への不満ではなく、自分たちの過失に矛先を向けた。そこに、この指揮官の試合後の流儀が見える。
4月を前に──守備という宿題
リーガ29試合で28失点。今日の3失点を含めてもリーグ上位の堅守に分類される。オブラクはリーガで10クリーンシートを記録しており、ムッソもリーガ4試合連続無失点でダービーに臨んでいた。ただ、CLに目を向けると景色が一変する。12試合で24失点、1試合平均2.0。全12試合で失点を喫し、クリーンシートがゼロだ。リーガの堅守とCLの脆さ。このコントラストを、4月のノックアウトステージに持ち込むわけにはいかない。
攻撃面の不安は小さい。2026年に入ってからアトレティコはコンスタントに得点を重ねており、この試合でもオープンプレーのxG 1.00を上回る2得点を挙げた。アルバレスは今季全大会17ゴールを数え、モリーナは2試合連続でペナルティエリア外からネットを揺らしている。得点力が足りないのではない。問題は、自ら差し出す失点が消えないことにある。
CL準々決勝のバルセロナ戦(4/8カンプ・ノウ、4/14メトロポリターノ)、コパ・デル・レイ決勝(4/18 vsレアル・ソシエダ)。この3試合が今季の行方を決める。ノックアウトステージを制するために必要なのは、少ないチャンスを確実にものにし、失点を最小限に抑える戦い方だ。今日のように後方のパスミスから自ら崩れる展開は、最も避けなければならない負け方の典型だった。
ヒメネスに統率力を見せてほしかった試合でもある。PKを与えた直後の時間帯で守備を引き締める声やジェスチャーがもっと必要だったが、表情は終始冴えなかった。若い頃に見せていた闘争心がピッチの空気を変えることもあったが、この日のヒメネスにはそれがなかった。カルドーソは4月4日のバルセロナ戦(リーガ第30節)を累積警告で欠く。代表ウィークに入る今、シメオネが守備を再構築する時間は限られている。
「もっと試合をコントロールする必要があった。もっと危険なチャンスを作り出すべきだった。私が話していることを実行に移せなかった」
ディエゴ・シメオネ(Into the Calderón)
シメオネが4度繰り返したという「ミス」という言葉には、4月への危機感が透けている。マドリーのダービー無勝利が3年半ぶりに途切れた日、アトレティコに残されたのはトロフィーへの道筋と、その道を歩くために解決すべき守備の宿題だった。
選手レーティング
先発
| 選手 | ItC | FotMob | 寸評 |
|---|---|---|---|
| フアン・ムッソ | 6 | 5.2 | 前半3分のシュートを好セーブで阻止。PKと2・3失点目はほぼノーチャンス。後半にはアレクサンダー=アーノルドのFKも弾いた。ギュレルのシュートをファンブルした場面はハンツコに救われた。 |
| マルコス・ジョレンテ | 6 | 7.0 | 右サイドバックの位置でヴィニシウスの対面を担当し、前半はG.シメオネと連携して封じ込めた。序盤にはカルバハルに倒された場面でのチャンスも。アトレティコの守備の骨格だった。 |
| ロビン・ル・ノルマン | 5 | 6.4 | 前半は右サイドの守備に貢献したが、体調不良でHTに交代。短い出場時間の中では大きな破綻なし。 |
| ダビド・ハンツコ | 5 | 6.4 | 前半終了間際にムッソのファンブルをカバーした連続プレーは見事。52分にブラヒム・ディアスとの接触でPKを献上。判定への議論はあるが、バランスを崩した時点で自ら招いた結果だった。 |
| マテオ・ルッジェーリ | 5 | 6.7 | ルックマンのゴールではオーバーラップからクロスを供給し、攻撃面では貢献。55分のバルベルデのゴールを招いた自陣への不用意なバックパスは致命的だった。守備面での判断の甘さが再び出た。 |
| ジュリアーノ・シメオネ | 6 | 8.6 | 20分のゴールラインクリア2回でヴィニシウスの得点を防ぎ、33分にはバックヒールでルックマンのゴールをアシスト。ジョレンテとの守備連携も光った。この日最も多くの仕事をこなした選手の一人。 |
| ジョニー・カルドーソ | 5 | 6.3 | 複数のマドリーの攻撃を潰したが、ファウルなしで止める精度に課題が残る。27分のイエローが累積5枚目となり、次節バルセロナ戦(リーガ)を欠場。57分に交代。 |
| コケ | 6 | 6.4 | バリオスとロドリ・メンドーサの不在が続く中盤で、組織のまとめ役として奮闘。36歳の足は衰えを見せつつあるが、中盤の構造を維持する能力は依然として唯一無二。 |
| アントワーヌ・グリーズマン | 6 | 6.7 | ジョレンテの序盤のチャンスを演出し、守備でもトラッキングを怠らなかった。好調を維持しているが、57分に交代。4月に向けた温存とも取れる。 |
| フリアン・アルバレス | 5 | 8.1 | 60分と65分にシュートを放ち、66分のモリーナのゴールではボールを受けてさばく役割を果たした。81分のポスト直撃は数センチの差。決定力を発揮しきれなかったが、存在感は示した。 |
| アデモラ・ルックマン | 7 | 7.7 | 33分の先制ゴールは、冷静なポジション取りと右足のフィニッシュが見事。冬の移籍後やや沈黙が続いていたが、ベルナベウでの一撃で復調の兆し。57分に交代。 |
交代出場
| 選手 | ItC | FotMob | 寸評 |
|---|---|---|---|
| ホセ・マリア・ヒメネス | 4 | 5.1 | 46分〜(←ル・ノルマン)。55分、ルッジェーリのバックパスをダイレクトで処理しようとしてバルベルデに奪われ、失点の直接的な原因に。守備の立て直しを期待された投入だったが、裏目に出た。 |
| ナウエル・モリーナ | 6 | 7.5 | 57分〜(←ルックマン)。66分、約25ヤードから右足を振り抜きゴール上隅へ。ヘタフェ戦に続く2試合連続のスーパーゴール。投入から9分での結果。 |
| アレクサンダー・ソルロート | 5 | 6.2 | 57分〜(←グリーズマン)。終盤にルッジェーリのクロスからヘディングを放ったがルニンに阻まれた。限られた時間の中で大きなインパクトは残せず。 |
| ニコラス・ゴンサレス | 4 | 6.4 | 57分〜(←カルドーソ)。72分の決勝点ではアレクサンダー=アーノルドに振り切られ、パスを許した。守備面の対応に課題を残した。 |
| アレックス・バエナ | 4 | 6.7 | 71分〜(←G.シメオネ)。投入直後にヴィニシウスの決勝ゴールでかわされた。バルベルデの退場を誘ったが、最後のシュートはルニンに止められた。限られた時間で存在感を示すには至らず。 |