🟨 プビル(48')、バエナ(90+5')|オニエディカ(77')
試合概要──「90分のうちの45分」
バルセロナ戦で4-0の圧勝を見せたスタメンをほぼそのまま並べ、アトレティコはチャンピオンズリーグ・プレーオフ第1戦に臨んだ。コパ・デル・レイの大勝からラージョ戦の惨敗を経てのこの一戦。結果は3-3。2点のリードを二度つくりながら、二度とも追いつかれた。
シメオネは試合後、「試合は90分であって45分ではない」と語った。その通りだ。前半の支配と後半の瓦解を一つの試合として引き受けるなら、このドローは妥当だった。
フォーメーションはバルセロナ戦と同じ4-4-2。左にルックマン、右にジュリアーノ・シメオネ、中盤はコケとジョレンテが並び、グリーズマンとアルバレスの2トップ。負傷のバリオスとニコラス・ゴンサレスを除けば、最強に近い布陣だった。問題は、その布陣がバルセロナ戦とまったく同じであるにもかかわらず、パフォーマンスの再現性がまるでなかったことだ。ここにこそ、今季のアトレティコが抱える最大の課題──一貫性の欠如──が凝縮されている。
前半──効率的に、しかし支配はできず
8分、ホアキン・セイスがクリアを誤りハンドの判定。VARチェックの末、PKが与えられた。アルバレスがゴールポストを揺らすほどの強烈なキックで先制。今季UCL5得点目、通算UCLキャリア12ゴール目(18試合)となった。
しかし先制後のアトレティコは、押し込むのではなく引いた。ブルージュがボールを持ち、アトレティコはカウンターを狙う形に移行したが、ブルージュの若い選手たちの推進力は予想を超えていた。オニエディカは前半だけで二度の決定機を迎え、オブラクのセーブがなければ同点だった。保持率はブルージュ58%対アトレティコ42%。内容で上回っていたのはホームチームの方だった。
それでもアトレティコは効率で上回った。前半アディショナルタイム4分、グリーズマンがコーナーキックをニアでフリック。ファーに流れたボールにルックマンが反応し、身体ごとゴールに押し込んだ。ルックマンのCLアトレティコデビューゴールであり、アタランタ時代にブルージュと対戦した9月のリーグフェーズに続く、この相手との縁を感じさせる一撃だった。フィジカルを生かした浮き球の処理やポストプレーでもチームに貢献しており、限られた時間のなかで印象を残した。
2-0。スコアだけ見れば盤石だが、内容との乖離は明らかだった。
後半──9分間で蒸発した2点差
後半開始わずか6分で、試合はまったく別の景色になった。
51分、トレソルディのヘディングをオブラクがはじくも、こぼれ球に詰めたオニエディカが押し込んだ。オブラクの対応は中途半端で、ボールをオニエディカの足元に落としてしまった。ラージョ戦のレポートで触れた「GK最高評価の裏にある構造的問題」が、再び顔を出した形だ。
60分、今度はブルージュの左サイドからの崩し。ディアコンが左サイドを突破してクロスを送り、ニアに走り込んだトレソルディが合わせた。ブルージュ3得点すべてがアトレティコの右サイドから生まれているという事実は、偶然ではない。
ここが今日、とにかく厳しかったポイントだ。モリーナとジュリアーノ・シメオネのコンビネーションは、攻守両面で機能しきれなかった。モリーナはセンターバック的に中に入る場面が多く、ジュリアーノは高い位置を取りがちだったため、両者の間にスペースが生まれた。3点目(89分のツォリス)もまさにその隙間を、オニエディカのスルーパスで貫かれたものだ。ジュリアーノについては前半からパスの判断と質に課題が見え、悪目立ちしている時間帯があった。大舞台で時折見せる「まだ格が足りない」と感じさせる瞬間──ItCの言う"下部リーグから空輸されてきたような"プレーが、この夜は少なくなかった。
「チャンピオンズリーグでは守備と攻撃の両方に強度が必要だ。難しいスタジアムで、我々は0-2、2-3とリードした。相手は正当に追いついた」
── ディエゴ・シメオネ(試合後会見)
交代策──ソルロートがもたらした変化
62分、ルックマンに代えてバエナを投入。66分にはグリーズマンを下げてソルロートを入れた。この2枚替えが後半の流れに変化をもたらした。
70分以降、ブルージュのハイプレスが弱まると中盤にスペースが生まれ、アルバレスとバエナがそのスペースで受けられるようになった。ボールの循環は改善し、前線への供給は増えた。しかし、アタッキングサードからフィニッシュに至るまでの精度がボトルネックとなり、決定打を欠く時間帯が続いた。
ソルロートは交代前の選手とは異なる強みを見せた。投入後すぐにヘディングでクロスバーを叩き、続くシュートもミニョレに阻まれた。79分にはジョレンテの右サイドからのクロスに対し、オルドニェスに競り勝ってオウンゴールを誘発した。ただし、周囲のサポートが薄く、ボールを収めた後にパスの出しどころがない場面が目立った。もともと足元の技術やパス精度で勝負するタイプではないため、孤立すると何もできない時間帯もあった。フィジカルの強みを生かせる場面では十分に仕事をしたが、チームとしてソルロートをどう活かすかという周囲の連携には課題が残る。
この3点目に至る流れで光ったのがプビルだ。プビル→ジュリアーノ・シメオネ→ジョレンテと繋がったパスワークのなかで、プビルのパスはテンポ感・位置ともに素晴らしかった。
プビルはこの夜、守備面で特に光る存在だった。体を張ったシュートブロックや、足の速さを生かした対人対応は安定感に溢れており、コンチネンタルの舞台でさまざまなタイプのFWと渡り合う経験を着実に積んでいる。右サイドが厳しかったこの試合にあって、21歳の彼が見せた闘志と判断力には、今後のアトレティコを担うリーダー候補としての期待感がより一層増した。もっとも、ブルージュの1点目ではヘディングのクリアミスが失点の起点になっており、すべてが完璧だったわけではない。それでも、この夜の右サイドにおいて数少ないポジティブな存在であったことは間違いない。
モリーナについても一言付け加えたい。スタミナがあり、試合終盤でもボックス内に走り込む推進力は間違いなく武器だ。だが、その積極性がポジションバランスを崩す局面も多く、今夜はその代償が大きかった。
89分──ヤン・ブレイデルが揺れた
79分のオウンゴールで3-2。アトレティコが第2戦にアドバンテージを持ち帰ると思われた。しかし89分、オニエディカが左サイドのツォリスへスルーパス。ツォリスが左足でオブラクの逆を突き、ゴール右隅に流し込んだ。一度はオフサイドの旗が上がったが、VARが介入し、ゴールは認められた。
スタジアムが沸騰した。ブルージュの2点目で同点に追いついた瞬間の雰囲気も圧巻だったが、この89分のゴールはそれを凌いだ。25,235人の観衆が一体となった歓声は、このクラブのUCLにおける底力を象徴していた。
「何を改善すべきか? すべてだ」
── ディエゴ・シメオネ(試合後会見)
コケの存在感──黄昏のキャリアが放つ光
この夜、アトレティコで最も安定していた選手の一人はコケだった。ItC評価7はソルロートと並ぶチーム最高タイ。キャリアの晩年に差しかかりながら、年々テクニックに磨きがかかっているという評価は、今夜も裏切られなかった。ソルロートへのロフトボールがあと少しでゴールに繋がる場面もあった。中盤で唯一、試合を通じてテンポをコントロールしようとし続けた選手だった。
数字が語ること──今季UCL無失点なし
今季CLでアトレティコはここまで9試合を消化し、クリーンシートはゼロ。18失点を喫している(UEFA公式)。3失点以上を許した試合が3度。この日もオブラクは7セーブを記録したが、それはすなわち7回危険な場面を作られたということでもある。
xGはブルージュ2.22対アトレティコ2.36。数字上はアトレティコが上回っているが、ショット数17対13でブルージュが優勢だった点を踏まえると、アトレティコの「少ない好機を効率的に沈めたが、守備で破綻した」という構図が浮かび上がる。
「前半は我々がうまくいっていたが、試合全体を見ればドローは妥当だ。どちらにもチャンスがあった。第2戦はホームだ」
── ディエゴ・シメオネ(試合後会見)
視座──勝ちきれない構造は深刻、しかし終わってはいない
リーグ戦では首位レアル・マドリードに15ポイント差の4位。優勝争いからは事実上脱落している。コパ・デル・レイではバルセロナに4-0のアドバンテージを持つが、この試合とラージョ戦を見れば、その安心感にも限界がある。シーズンが残すのはCLとコパ。ここで躓けば、2月にしてシーズン終了という最悪のシナリオが現実味を帯びる。
ただし、このタイは終わっていない。スコアは3-3。第2戦はメトロポリターノだ。アトレティコは今季ホームで圧倒的な強さを見せてきた。最近はホームで落とす試合もあったが、基本的にはメトロポリターノの力を味方につけてきたチームだ。突破の可能性は十分にある。
問題は、バルセロナ戦とほぼ同じスタメンでこの結果になったという事実だ。4-0と3-3。同じ11人が、6日間で正反対のパフォーマンスを見せた。シメオネの「すべて(を改善すべきだ)」という言葉は、個人の問題ではなくシステムの問題を示唆している。ブルージュは特別な個の力で打ち負かしたのではない。準備と規律で弱点を突いた。アトレティコがそれに対応する速度が、あまりにも遅かった。
シメオネは言う──「火曜だけではない。土曜のエスパニョール戦でも、我々はファンとともにあるべきだ」。パルティード・ア・パルティード。一試合一試合。今季はその言葉が、哲学というよりも生存戦略に聞こえる。