24分で消えたリードを、31分の一撃で取り戻した試合
2-0。ファーストレグで持ち帰ったこの数字を、メトロポリターノの69,268人も、画面の前で固唾を飲んでいたファンも、信じていたはずだ。先週のカンプ・ノウで、10人のバルセロナを相手にフリアン・アルバレスのフリーキックとアレクサンダー・ソルロートの追加点で手にしたアドバンテージ。しかしバルセロナはわずか24分でそれを帳消しにした。
4分、クレマン・ラングレの不用意なバックパスをラミン・ヤマルに拾われ、ムッソの股を抜かれて先制を許す。20分後にはダニ・オルモのスルーパスに反応したフェラン・トーレスが、ラングレの遅れた寄せを尻目にムッソの手の届かないファーサイド上隅へ叩き込んだ。合計2-2。メトロポリターノは静まり返り、ピッチの空気はバルセロナ側に完全に傾いていた。
ところが、この試合の物語は25分から先で書き換えられる。フェラン・トーレスのゴール直後、フェルミン・ロペスの至近距離ヘッドをフアン・ムッソが辛うじて弾き出し、0-3を免れた。そしてその6分後、アトレティコはたった一度のカウンターで合計スコアを再び引き寄せる。31分、アデモラ・ルックマン。あの1本がすべてを変えた。
以降、アトレティコはボールをほとんど持てなかった。試合全体のポゼッションは29%対71%。バルセロナの枠内シュートは8本、ビッグチャンスは7回を数えた。それでもスコアボードは動かなかった。後半終盤にはVAR介入を経てエリック・ガルシアがDOGSOで退場し、バルセロナは10人に。試合は1-2で終わり、アトレティコは合計3-2で2016/17シーズン以来9年ぶりのCL準決勝に駒を進めた。嵐を受け、一閃で切り返し、あとは耐え抜く。シメオネのチームが最も得意とする勝ち方だった。
ルックマンの一撃──31分に何が起きたか
31分、ルックマンがネットを揺らした瞬間、メトロポリターノが息を吹き返した。あの得点がどう生まれたか、過程を分解してみたい。起点はコケだった。ラングレがボールを持つたびにスタンドにざわめきが走る前半、コケは自ら深い位置に降りてビルドアップの出口となった。そこから右への素早い前進が始まり、グリーズマンを経由してジョレンテが抜け出す。ジョレンテは右サイドを一気に加速し、ペナルティエリア内へ持ち込んで低いクロスを送った。ルックマンはクンデの寄せを受けながらも、ジョレンテの低いクロスを冷静に流し込んだ。
このゴールの価値は、数値以上に文脈にあった。直前の25分間を振り返ればわかる。ラングレの致命的なミスでヤマルに先制され、追加点も許し、フェルミンの至近距離ヘッドはムッソに弾き出されたにすぎない。0-3になっていてもおかしくなかった。FotMobによると、バルセロナのパス成功率は90%を超え、ポゼッションは70%台を推移していた。アトレティコが最も苦しい時間帯に、たった一つの縦への切り替えがこのゴールを生んだ。冬にアタランタから加わったルックマンは、ここ一番で決定的な得点を重ねている。移籍金は約3500万ユーロと報じられたが、その金額さえ安く見えるほどのインパクトだ。
エリック・ガルシアの退場──DOGSOの4基準から見た判定
後半終盤、ソルロートが裏へ抜け出す場面が訪れた。きっかけはジョレンテの縦パスだった。ソルロートがボールを収めようとしたその瞬間、エリック・ガルシアが背後からソルロートの体を押し倒した。主審のクレマン・トゥルパンは当初イエローカードを提示したが、VARが介入。ピッチサイドモニターを確認したトゥルパンは、判定をレッドカードに変更した。
IFABが定めるDOGSO(明確な得点機会の阻止)の判定基準は4つある。ゴールまでの距離、プレーの方向、守備者の数と位置、そしてボールを保持または保持できる可能性だ。この場面を一つずつ照合してみる。ソルロートはペナルティエリアのすぐ手前、ゴールまでの距離は十分に近い。プレーの方向はゴールへ向かっている。ファウルが発生した時点で、ソルロートの体は最終ラインよりゴール側に出ていた。ボールはソルロートの制御下に入りかけていた。クンデが並走しており追いつく可能性はゼロではなかったが、ファウルがなければソルロートがGKと1対1に近い状況になっていた蓋然性は高い。
ASの審判分析家エドゥアルド・イトゥラルデ・ゴンサレスも「リプレーを見ると、私にはイエローよりレッドだ。レッドであり、VARが介入すべきだった」と支持している。筆者としても、この判定は妥当だったと考える。押す・引っ張る系の反則はボールへのアプローチとは認められにくく、ペナルティエリア外であれば、DOGSOに該当する場合は通常レッドカードとなる。
なお、ファーストレグでもクバルシが前半終盤にジュリアーノ・シメオネを倒してDOGSOで退場しており、バルセロナは2試合連続で同様の退場者を出した。バルセロナの高い最終ラインが裏のスペースを生みやすい構造を持っているのは確かだが、それが直接的に2度のDOGSOを招いたと断じることはできない。ただ、そうした見方は十分に成り立つだろう。
180分を支えた3人──ジョレンテ、ル・ノルマン、ムッソ
2試合を通じてアトレティコの守備を支えた選手は多い。シメオネも試合後の記者会見で「途中出場の選手たちも含め、とてつもない力をもらった」と語っている。ここでは、とりわけ際立っていた3人を挙げたい。
マルコス・ジョレンテ──攻守のあらゆる局面に
ルックマンへの決定的アシストが目を引くが、この試合のジョレンテの価値はそれだけでは語れない。中盤の守備負荷を引き受けながら、攻撃に転じれば一気に前線まで駆け上がる。終盤も守備から攻撃への切り替えに関わり続け、運動量が落ちなかった。攻守のあらゆる局面に顔を出しながら、イエローカードを一枚も受けずに90分を走り切った。FotMob系データによればタックル成功やデュエル勝利数でもチーム上位の数字を残しているが、数字よりも「もう一人いるのではないか」と思わせるほどのカバー範囲こそが、この日のジョレンテの本質だった。
ロビン・ル・ノルマン──進化した守り方
少し前のル・ノルマンを知る者なら、バルセロナとの180分をイエローカード無しで終えることは想像しづらかったはずだ。腕を使って相手を掴む癖、反応の遅れをディレイのタックルで帳消しにしようとする場面。大一番でそうしたプレーが出れば、カードは避けられない。今回は違った。体を相手の前に立てる。腕に頼らず、ポジショニングと読みで対応する。74分、セットプレーの流れからゴール正面でシュートを放ち、ジョアン・ガルシアにビッグセーブで阻まれる場面もあった。守備で崩れず、要所では攻撃にも牙を見せた。2試合を通じてその姿勢を貫いたことが、ル・ノルマンの成長を物語っている。
フアン・ムッソ──7セーブの守護神
月曜日にヤン・オブラクが練習に復帰した。シメオネには選択肢があった。クラブを代表する守護神を戻すか、ここまで結果を出してきたムッソを続投させるか。シメオネはムッソを選んだ。Into the Calderónが指摘する通り、ラ・リーガまたはCLで、復帰可能なオブラクを差し置いてムッソが先発したのはこれが初めてだった。
4分のヤマルのゴールは股を抜かれた失点であり、24分のフェラン・トーレスのシュートにもやや対応が遅れた。しかし、25分直後のフェルミンのヘディングに対する反応、あの1本を止めなければ、0-3になり、試合の流れは完全にバルセロナのものになっていた。後半に入っても、クロスへの飛び出し、1対1での間合い詰め、レバンドフスキのヘッドへの対応と、合計7セーブを記録した。180分を通じて、あと1点でも多く失っていれば結果は分からなかった。ムッソの手がなければ、この準決勝進出は存在しない。
グリーズマン──まだ終わっていない別れのシーズン
76分、アントワーヌ・グリーズマンがソルロートと交代でピッチを去った。メトロポリターノのスタンドが送った拍手は、単なる交代への儀礼ではなかっただろう。3月24日、グリーズマンの今夏オーランド・シティへの移籍が公式発表されている。もしこの試合でアトレティコが敗退していれば、メトロポリターノでの最後のチャンピオンズリーグの記憶になっていた。
グリーズマンはこの試合でも変わらなかった。前線での守備に走り、ルックマンのゴールの場面ではグリーズマンのワンタッチがジョレンテへの中継点になっている。74分から75分にかけてはセットプレーの流れからル・ノルマンにチャンスを供給し、交代の瞬間まで試合の質を保ち続けた。それがグリーズマンのグリーズマンたる所以だ。
シメオネはバルセロナ戦前後の会見で、グリーズマンを「天才」と表現していた。「我々は天才を持っているし、持っていた。時間が経てばそのことに気づくだろう」。感傷に浸る時間はまだ来ていない。4月18日にはレアル・ソシエダとのコパ・デル・レイ決勝がセビージャで待ち、その先にはCL準決勝がある。この別れのシーズンには、まだ書かれていない章が残っている。
9年ぶりのベスト4、そしてバルセロナとの欧州ノックアウトの相性
アトレティコのCL準決勝進出は2016/17以来9年ぶりで、シメオネ政権では4度目にあたる。2013/14と2015/16は決勝まで進みながらいずれもレアル・マドリードに敗れた。2016/17は準決勝でやはりレアル・マドリードに合計4-2で敗退。それから9年、アトレティコは再びヨーロッパのベスト4に名を連ねた。
バルセロナとのCLノックアウトステージの対戦は、これで3戦3勝となった。2013/14の準々決勝(合計2-1)、2015/16の準々決勝(合計3-2)、そして今回の2025/26(合計3-2)。メッシのいた時代も、ヤマルの時代も、シメオネのアトレティコはノックアウトの180分でバルセロナに負けたことがない。
「14年になる。正直に言って、このチームがまだ戦い続けている姿は本当に胸を打つ」。シメオネは試合後、声を詰まらせながらそう語った。「選手は何度も入れ替わり、何度もやり直してきた。それでもまたヨーロッパのベスト4にいる」。この言葉の重みは、シメオネが2011年12月に就任してからの14年間を知る者ほど深く響く。ディエゴ・コスタもアルダ・トゥランもゴディンもいない。フィリペ・ルイスもガビもいない。シメオネ就任当初から残るのはコケだけだ。新しい選手たちが何度もチームを作り直してきた。
この試合のもうひとつの意味は、自分たちの選手を守ったことにあるかもしれない。前半のラングレの不安定さは、敗退していれば厳しい視線が集中していた可能性が高い。シメオネは「試合前に話した。彼は我々に何も証明する必要はない」と明かした。結果として突破したことで、ラングレも含め、チーム全体が前を向ける状態でこの先の戦いに臨める。
準決勝の相手はアーセナルに決まった。4月18日のコパ・デル・レイ決勝を挟み、ヨーロッパの頂点への道が続く。シメオネは言った。「4回目の準決勝だ。CL準決勝を戦えるなんて、すごいことだ」。14年かけて何度も壊れ、何度も組み直したチームが、またここにいる。
選手レーティング
| 選手 | ItC | FotMob | 寸評 |
|---|---|---|---|
| フアン・ムッソ | 7 | 8.2 | 4分のヤマルのゴールでは股を抜かれたが、以降は守護神に変貌。フェルミンの至近距離ヘッドを止め、計7セーブでゴールを死守した |
| ナウエル・モリーナ | 8 | 6.7 | 右サイドの守備強度を保ち、対面対応で大きく崩れなかった。ジョレンテとの連動は攻撃の起点にもなった |
| ロビン・ル・ノルマン | 7 | 6.2 | 1失点目ではヤマルをオンサイドに置いた形だが責任は薄い。74分にはゴール正面から強烈なシュートを放つも、ジョアン・ガルシアに阻まれた。2試合通じてイエローカード無し |
| クレマン・ラングレ | 4 | 4.7 | 開始4分の致命的パスミスでヤマルにゴールを献上。2失点目もオルモのスルーパスへの反応が遅れた。25分以降は安定を取り戻したが、代償はあまりにも大きかった |
| マテオ・ルッジェーリ | 8 | 6.4 | ヤマル番として身体を張り続けた。後半半ばの接触で流血しながらも包帯を巻いてピッチに復帰。2試合を通じてヤマル対応の最前線に立ち続けた |
| ジュリアーノ・シメオネ | 6 | 6.0 | 1stレグほどの爆発的な縦突破は見られなかったが、運動量と献身性は健在。66分にバエナと交代 |
| コケ | 8 | 7.4 | ラングレが揺れる中、深い位置に降りてビルドアップを支えた。ルックマンのゴールの起点。89分までチームを導いた |
| マルコス・ジョレンテ | 8 | 8.1 | ルックマンへの決定的アシスト。守備でも中盤の負荷を一手に引き受け、イエローカード無しで90分を完走した。攻守のダイナミズムでチームの背骨となった |
| アデモラ・ルックマン | 7 | 7.6 | 試合を決定づけた31分のゴール。クンデの寄せを受けながら冷静に流し込んだ。66分交代 |
| アントワーヌ・グリーズマン | 8 | 6.3 | 攻守に走り続け、守備での献身はチーム最高水準。74〜75分の連続チャンスにも関与した。76分にソルロートと交代 |
| フリアン・アルバレス | 6 | 6.1 | 半拍ずれるシーンもあったが、前線での献身と走力でプレッシングの第一線を担った |
| 選手 | ItC | FotMob | 寸評 |
|---|---|---|---|
| アレックス・バエナ | 6 | 6.1 | 66分〜(←ジュリアーノ)。退場後のペースコントロールに貢献した |
| ニコラス・ゴンサレス | 6 | 6.1 | 66分〜(←ルックマン)。決定機を1本外したが、ヤマルの反対サイドに配置された采配は的確だった |
| アレクサンダー・ソルロート | 6 | 6.9 | 76分〜(←グリーズマン)。エリック・ガルシアのレッドカードを引き出した |
| ジョニー・カルドソ | N/A | — | 89分〜(←コケ)。終盤のクローズに加わった |
※ItCレーティングはInto the Calderón、FotMobレーティングはFotMobより。