ハンツコのバー直後にルックマンが仕留めた
序盤はジローナが前に出てきた。ブライアン・ヒルが5分にスワーブのかかったミドルシュートを左ポスト脇に飛ばし、11分にはヘディングも枠を逸れたが際どい角度だった。アトレティコ・マドリードが4-4-2で構える一方、ジローナはウナイを中盤から前線の間で自由に動かし、左サイドのジョエル・ロカから何度もクロスを入れた。
しかし先にゴールに迫ったのはアトレティコだった。19分前後、コーナーキックの流れからハンツコのヘディングがクロスバーを叩く。跳ね返りを拾ってアトレティコが押し込み続けた直後の21分、グリーズマンがペナルティエリア内でスペースを見つけ、低い横パスを送る。ガッサニガの前に走り込んだルックマンが右足で合わせ、ネットを揺らした。1月の加入以降、リーガ4ゴール目。グリーズマンにとっては、最後のホームゲームで残した決勝点のアシストだった。
この試合で光ったのがオベド・バルガスの中盤での仕事ぶりだ。地上戦7勝、パス成功23/28本(82%)、ボール回収3回。ドリブルで剥がされる場面も後半に数度あったが、ボールを受けてさばく判断の速さ、デュエルの強度ともに、来季のファーストチームに残す理由としては十分だったように思う。Into the Calderónも7点の評価で「来季トップチームに残る説得力ある材料を見せた」と評しており、筆者としても同意する。
オブラクが守った1点と残った守備の課題
シュート数、枠内シュート、xGだけを見れば、この試合はジローナが勝っていてもおかしくなかった。FotMobによれば、xGはアトレティコ1.97、ジローナ2.17。シュート数は17対25、枠内シュートは4対11、ペナルティエリア内でのタッチは28対51。ボール保持率も47%対53%とジローナが上回った。降格圏にいるチームに、これだけ押し込まれたのだ。
それでも勝ち点3を持ち帰れたのは、オブラクが最後の砦として立ちはだかったからに他ならない。FotMobとInto the Calderónによれば、この試合のセーブ数は11。とりわけツィガンコフの強烈なシュートを2度にわたって弾いた場面と、終盤にウナイが放った一撃を止めた場面は、試合を動かしかねない瞬間だった。Into the Calderónは9点、FotMobは8.9点という高評価を与えている。調子が良いだけでなく、チームに不可欠な存在であることを改めて示した試合だった。
一方で、守備が安定していたというより、オブラクが崩れなかっただけの試合でもある。ル・ノルマンは23分にイエローカードを受け、ウナイのドリブルに手を焼いてItC評価は4.5。プビルも右サイドでジョエル・ロカのクロスに苦労し、同じく4.5。守備陣全体が高いラインを保てず、最終節を含め、来季に向けて整理すべき課題は残っている。
勝ち点69でビジャレアルと並び、最終節の直接対決へ
この勝利でアトレティコは勝ち点69に到達した。同節でラージョ・バジェカーノに敗れたビジャレアルも勝ち点69のままとなり、両者は得失点差+22でも並んでいる。ただし、ラ・リーガ公式順位表ではビジャレアルが3位、アトレティコが4位のまま最終節を迎える。5月24日のラ・セラミカでの直接対決が、そのまま3位を決める一戦になった。今季前回対戦はアトレティコが2-0で勝っているため、アトレティコは引き分け以上で3位に入る。一方、ビジャレアルが3位を守るには勝利が必要になる。来季のCL出場権はすでに確保しているが、リーガを3位で終えられるかどうかは、この一戦にかかっている。
500試合目に残した決勝点のアシスト
グリーズマンにとって、この試合はアトレティコでの通算500試合目であり、メトロポリターノでの最後のホームゲームだった。2017年9月16日、このスタジアムの歴史的初ゴールを決めたのもグリーズマンだ。メトロポリターノでの通算成績は、beIN Sportsによれば165試合74ゴール。同会場での2位はアンヘル・コレアの42ゴールで、32ゴールの差がある。
この日のルックマンへのクロスで決勝点をアシストし、クラブ歴代最多の212ゴールを誇る男は、最後のホームゲームでも得点を作って別れを告げた。試合中も随所に存在感があった。序盤にはガッサニガの好セーブに阻まれ、後半にも惜しいシュートを枠の外へ。アルマダからのパスに反応してエリア内で放ったシュートが合わなかった場面では、本人が笑顔を浮かべていた。ゴールは生まれなかったが、ホーム最終戦の90分としては、グリーズマンらしい時間だった。
メトロポリターノが見届けた30分超のセレモニー
試合終了後、6万4千人を超える観衆の多くがセレモニーを見届けた。チームメイトとコーチングスタッフが花道を作り、グリーズマンをピッチへ迎え入れるところからセレモニーは始まった。スタジアムのスクリーンにはプレー集が映し出された。
映像を見ていて改めて思い出したのは、若い頃のグリーズマンが、今よりもゴール前の仕事に寄った選手だったことだ。レアル・ソシエダから加入した2014年当時は左ウイングだったが、シメオネのもとで中央に移ってからはゴールへの嗅覚が爆発的に研ぎ澄まされた。近年はその鋭さを保ちながらも、前線と中盤の繋ぎ役へと変化し、チーム全体を動かす役割を担うようになった。プレー集に映る時系列の変化は、一人のアタッカーが10年かけて成熟していく過程そのものだった。
映像が終わると、現キャプテンのコケ、オブラク、そして負傷のためこの日の試合メンバー外だったホセ・マリア・ヒメネスが、サイン入りのユニフォームを手にピッチへ現れた。3人はグリーズマンにユニフォームを渡し、言葉を交わした。オブラクは「バロンドールを獲るべきだった」と語り、試合前には「最後の試合だと思って楽しんでくれ」と声をかけていたことを明かした。2014年前後からこのクラブに在籍し続けるメンバーが、また一人いなくなる。その事実が、サイン入りユニフォームという形で目の前に差し出された瞬間だった。
続いて、歴代のレジェンドたちが姿を見せた。ガビはスクリーン越しに言葉を送り、アデラルド、トマス・レニョネス、ミゲル・アンヘル・ルイス、ロベルト・ソロサバル、アントニオ・ロペス、ディエゴ・ゴディン、フェルナンド・トーレスがグリーズマンを囲んだ。クラブの歴史を異なる時代から代表する面々が一堂に会する光景には、胸を打たれるものがあった。トーレスのように引退後もクラブとの絆を保ち、こうした場に駆けつけるレジェンドがいること自体が、アトレティコというクラブの文化を物語っている。
コケはスピーチで、グリーズマンが最初に加入した2014-15シーズンのユニフォームを着て壇上に立った。「ガビ、フアンフラン、ラウール・ガルシア、ジエゴ・コスタ、フィリペ・ルイスが去り、今度は俺の兄弟が去る」。トーレスは「多くの人がこの目で見た中で最高の選手だ。それは間違いない」と言い切り、シメオネは涙をこらえながら「ウイングとして来て、中央に置いたらゴールに貪欲になった。その明るさはチームメイトに伝染し、ふさわしい場所へ連れて行った」と語った。ゴディンは「これは最も美しい章の終わりだが、これからますます語り継がれるレジェンドの始まりでもある」と、友人に別れを告げた。
最後にグリーズマン自身がマイクを握った。「準備していた言葉は全部飛んでしまった」と笑いながら、最初に口にしたのはバルセロナ移籍への謝罪だった。「ここにどれだけの愛があったか、わかっていなかった。若かった。間違えた」。そしてシメオネへの感謝に移り、「あなたのおかげでワールドチャンピオンになれた。世界一だと感じられた。あなたのために戦えたことは名誉だ」と続けた。コケを「俺のお気に入りの太っちょ」と呼んで笑いを誘いつつ、「お前はこのクラブのレジェンドだ」と告げた。
家族がピッチに集まった場面も印象に残った。妻のエリカ・チョペレナと4人の子供たち(ミア、アマロ、アルバ、シャイ)がグリーズマンのもとに歩み寄ると、スタンドからひときわ大きな拍手が起きた。グリーズマンは「支えてくれた。敗戦の後の怒りにも付き合ってくれた」とエリカに感謝を捧げた。この夜の言葉には、ピッチ外で支えてきた家族への感謝が、そのまま表れていた。
そして締めくくりの言葉。「ラ・リーガもチャンピオンズリーグも持ち帰れなかった。でも今夜のこの愛は、それ以上の意味がある。皆さんの愛を、一生持って行く」。グリーズマンはエリカと子供たちとともにピッチを一周し、メトロポリターノに最後の別れを告げた。
グリーズマン不在のアトレティコが始まる
オーランド・シティへの移籍が決まっているグリーズマンに、アトレティコで残された公式戦はあと1試合。5月24日、ラ・セラミカでのビジャレアル戦だけだ。ホーム最終戦を終えた時点でクラブ歴代最多の212ゴールを刻んだ男は、マドリードでの最後の一戦へ向かう。
来季のアトレティコには、グリーズマンが担っていた前線と中盤の繋ぎ役を埋める選手が必要になる。この日チャンスクリエイト4回を記録したバエナは、その候補の一人だろう。バルガスの中盤での成長もシメオネの選択肢を広げるはずだ。ただ、グリーズマンの役割は戦術だけで語れるものではない。コケが言った「つらいとき、アントワーヌは子どものような明るさで全員を引き上げてくれた」という言葉が、それを端的に表している。
メトロポリターノに残ったのは、あの夜、6万4千人を超える観衆の多くがセレモニーを見届けたという記憶だ。タイトルではなく、愛情で語られるレジェンドの退場。そのことの意味は、来季が始まってから、じわじわと効いてくるのだと思う。
レーティング
先発
| 選手 | ItC | FotMob | 寸評 |
|---|---|---|---|
| オブラク | 9 | 8.9 | 11セーブ(FotMob/ItC基準)でチームを救った。ツィガンコフへの2度のビッグセーブ、終盤のウナイへの反応がなければ結果は変わっていた。 |
| プビル | 4.5 | 6.9 | ジョエル・ロカからの左サイドのクロスに手を焼き続けた。攻撃参加では枠を超えるシュートも。 |
| ル・ノルマン | 4.5 | 7.7 | 23分にイエロー。ウナイのドリブルに苦しみ、8クリアランスと7地上戦勝利で数字は残したが不安定だった。 |
| ハンツコ | 6.5 | 7.6 | 9クリアランスでエリアを守り、パス成功44/47本。ヘディングがクロスバーを叩いた場面は惜しかった。 |
| ルッジェーリ | 5 | 7.2 | 序盤にポジショニングミスがあったが、攻め上がりからのクロスは数本良い形に。 |
| ジュリアーノ・シメオネ | 4 | 7.1 | 攻守両面で存在感薄く、ハーフタイムでアルマダと交代。コンディション不良か。 |
| バルガス | 7 | 6.9 | 地上戦7勝、パス23/28成功、ボール回収3。後半ドリブルで剥がされる場面もあったが、来季に向けて十分な手応え。 |
| コケ | 5.5 | 6.9 | 前半のテンポ管理は安定。派手さはなかったが堅実なゲームメイク。 |
| バエナ | 6 | 7.5 | チャンスクリエイト4回。61分までの出場で攻撃にリズムを加えた。 |
| ルックマン | 7 | 7.7 | 21分のゴールはグリーズマンのクロスに右足で合わせた冷静な仕上げ。オフサイドで取り消された場面も含め、常にゴール前にいた。 |
| グリーズマン | 8 | 8.2 | 500試合目で決勝点をアシスト。ガッサニガに2度阻まれゴールは生まれなかったが、攻撃の中心であり続けた。 |
交代出場
| 選手 | ItC | FotMob | 寸評 |
|---|---|---|---|
| アルマダ | 5.5 | 7.2 | 46分〜(←ジュリアーノ・シメオネ)。ジローナの守備をこじ開けてグリーズマンにチャンスを供給した場面が光った。 |
| モルシージョ | 4.5 | 6.4 | 61分〜(←バルガス)。エネルギッシュだが85分に不用意なファウルでイエロー。経験を積む段階。 |
| セルロート | 4.5 | 6.7 | 61分〜(←バエナ)。味方との連携は見せたが、ガッサニガを脅かすには至らず。 |
| ラングレ | 5 | 6.3 | 63分〜(←ルックマン)。3クリアランスを記録し、エリア内の守備で貢献。 |
※ItCレーティングはInto the Calderón、FotMobレーティングはFotMobより引用。