アトレティコ
vs
レアル・ソシエダ

なぜこの「前哨戦」は特別なのか

3月7日、リヤド・エア・メトロポリターノにレアル・ソシエダを迎えるラ・リーガ第27節。順位表だけを見れば、3位(勝ち点51)が8位(勝ち点35)をホームで迎え撃つ、優位の明らかな一戦に映る。しかしこの試合には、数字だけでは測れない重層的な文脈がある。

まず、6週間後の4月18日、この2チームはセビージャのエスタディオ・デ・ラ・カルトゥハでコパ・デル・レイ決勝を戦う。アトレティコ・マドリードにとってコパ決勝は、2013年にサンティアゴ・ベルナベウでレアル・マドリードを2-1で下して以来、実に13年ぶりのことだ。レアル・ソシエダもまた、2019-20年シーズン以来のコパ決勝に到達している。ともに待ち望んだ舞台への切符を手にした両者が、その決勝に先立ってリーグ戦で激突する──これが単なる消化試合にはなり得ない理由のひとつである。

そしてもうひとつ、この試合にはアトレティコ史上最多得点者の物語が深く絡み合っている。アントワーヌ・グリーズマンにとってソシエダは、13歳でフランスからスペインに渡り、プロとしての第一歩を踏み出した原点だ。その古巣とコパ・デル・レイのタイトルを争う──しかも、それがアトレティコでの最後のシーズンになる可能性がある。この試合は、グリーズマンのキャリアの最終章に向けた序曲でもある。

グリーズマンの決断──コパ決勝が変えたシーズンの意味

今季のグリーズマンを語るには、ピッチの外で進行していた交渉の話を避けて通れない。

ESPNのロドリゴ・ファエスとグスタボ・ホフマンの報道によれば、MLSのオーランド・シティがグリーズマンに対し、デジグネイテッド・プレイヤーとしてのオファーを提示していた。条件は、MLSのプライマリー移籍ウィンドウが閉まる3月26日までの移籍。34歳のフランス人ストライカーは、2027年まで残るアトレティコとの契約にもかかわらず、この話を真剣に検討していたとされる。

アトレティコは今季、コパ・デル・レイで着実に勝ち進んでいた。そして2月12日、コパ準決勝第1戦でバルセロナを4-0と圧倒したことで、決勝進出はほぼ確実なものとなった。この大勝が、グリーズマンの決断に決定的な影響を及ぼしたと見られている。Into the Calderónの報道によれば、ディエゴ・シメオネ監督とマテウ・アレマニーSDは以前からグリーズマンに対し、シーズン終了まで残留してコパ決勝を戦うよう説得を続けていた。第1戦での4-0という結果は、決勝進出をほぼ確定させると同時に、グリーズマンがオーランド行きをシーズン終了後に先送りする方向に傾く決定打となった。

3月3日のカンプ・ノウでの第2戦で、バルセロナに0-3で敗れたものの合計4-3でアトレティコは決勝進出を正式に決めた。試合後のシメオネの言葉は、指揮官の率直な感情を映していた。

「そう願っている。彼は誰よりもそれ(決勝でプレーすること)に値する。今日の彼のパフォーマンスは素晴らしかった。彼のクオリティとタレントは生涯残り続けるものだ。私が彼に何を感じているか、皆さんはもうご存知だろう。彼を愛している、常に最善を望んでいる。決勝で彼がプレーできることを願っている」

そしてその決勝の相手がソシエダであるという事実が、この物語にもうひとつの層を加える。グリーズマンは2005年、13歳でマコンからサン・セバスティアンへ渡り、ソシエダのカンテラに入った。2009年にトップチームデビューを果たし、2014年にアトレティコへ移籍するまでの間に202試合に出場して52ゴールを記録。スペインの地でプロサッカー選手としての基盤を築いた場所がソシエダだった。

アトレティコ通算483試合210ゴールというクラブ史上最多記録を持つグリーズマンだが、そのキャリアには、ひとつだけ埋まらない空白がある。2017-18年のUEFAヨーロッパリーグやUEFAスーパーカップは掲げたが、国内主要タイトルはアトレティコの一員としては一度も獲得していない。2020-21年にアトレティコがリーガを制した時、グリーズマンはバルセロナにいた。バルセロナ時代にはコパ・デル・レイを勝ち取ったが、アトレティコでの国内タイトルは手にしていない。4月18日のコパ決勝は、クラブ史上最多得点者がその空白を埋める、おそらく最後の機会になる。もしコパ決勝進出がなければ、3月26日のウィンドウ期限を前に、グリーズマンがオーランドへの移籍を決断していた可能性は十分にあった。決勝への道が、彼のアトレティコでの物語の結末を書き換えたのだ。

両チームの直近フォームと戦力比較

アトレティコはリーグ戦で3位(勝ち点51)に位置し、首位バルセロナ(64)に13ポイント差、2位レアル・マドリード(60)に9ポイント差をつけられている。タイトル争いは現実的に厳しく、チャンピオンズリーグ出場権の確保と、コパ・デル・レイ、そしてCL本戦での勝ち上がりがシーズンの焦点に移りつつある。

直近の全コンペティションの戦績を振り返ると、2月から3月初旬にかけてのアトレティコはスケジュールの過密ぶりの中で激しい浮き沈みを経験している。ラージョ・バジェカーノにはアウェーで0-3の完敗を喫し(2月15日)、レアル・ベティスにも0-1で敗れた(2月8日)。しかしその後、CLプレーオフ第2戦ではクルブ・ブルージュをホームで4-1と圧倒した(2月24日)。アレクサンダー・ソルロートがハットトリックを達成し、ジョニー・カルドーソが残りの1ゴールを決め、合計7-4でラウンド16進出を果たした。リーグ戦ではエスパニョール戦4-2勝利(2月21日)、レアル・オビエド戦ではフリアン・アルバレスの後半アディショナルタイムの決勝弾で辛くも1-0勝利(2月28日)と、苦しみながらも結果を拾う試合が続いた。

そして直近のバルセロナ戦(3月3日、コパ準決勝第2戦)では、カンプ・ノウで0-3の敗北。第1戦の4-0の貯金があったとはいえ、マルク・ベルナルの2ゴールとラフィーニャのPKで合計スコアを4-3まで詰め寄られ、ヒメネスの投入でようやく安定を取り戻すという展開だった。ジョニー・カルドーソやグリーズマンは90分間をフルに走り切っており、わずか4日後のソシエダ戦へのコンディション面の影響は避けられない。

一方のソシエダは、ペジェグリーノ・マタラッツォ監督の就任以来、別のチームに生まれ変わっている。2025年12月20日の就任後、Opta Analystの2月14日付分析が記した通り、リーグ戦では就任後6試合で4勝2分無敗(勝ち点2.3/試合)を記録し、全コンペティションで11試合の無敗を積み上げた。この連続無敗は2月14日のレアル・マドリード戦(1-4)で途切れたものの、その後はリーグ戦でレアル・オビエドと3-3のドロー(2月21日)、マジョルカをアウェーで1-0と下し(2月28日)、コパ準決勝第2戦ではアスレティック・クルブをレアレ・アレーナで1-0(合計2-0)で退けて決勝進出を決めた(3月4日)。ベルナベウでの大敗を挟みつつも立て直す回復力は、このチームがマタラッツォの下で身につけた新しいメンタリティの表れだろう。

戦力面で見ると、アトレティコはパブロ・バリオスが筋肉系の負傷で欠場が確定的。ソシエダ側では、久保建英がハムストリングの負傷で長期離脱中。アルバロ・オドリオソラも前十字靭帯断裂で今季絶望となっている。久保はマタラッツォ体制でのソシエダの攻撃に不可欠なクリエイターであり、その不在は特に崩しの局面で影を落とす。ただし、ゴンサロ・ゲデスやミケル・オジャルサバルがその穴を効果的に埋めていることも事実だ。

火曜の激戦を越えて──シメオネの設計図

カンプ・ノウでの激闘からわずか4日。そして3日後の3月10日(火)には、CLラウンド16第1戦のトッテナム・ホットスパー戦がリヤド・エア・メトロポリターノで控えている。シメオネにとって、ソシエダ戦のメンバー編成は「誰を使うか」以上に「誰を休ませるか」の問いに近い。

バルセロナ戦の先発メンバーを振り返ると、ジョニー・カルドーソとグリーズマンが90分間フル出場。マルコス・ジョレンテ、ダビド・ハンコ、マルク・プビル、マテオ・ルッジェーリのディフェンスラインもフル稼働した。一方、コケアデモラ・ルックマンは58分でソルロートとナウエル・モリーナに交代し、フリアン・アルバレスも69分でアレックス・バエナに替わっている。ジュリアーノ・シメオネは76分に負傷で退いた。シメオネは今季、ホームのリーグ戦では安定した成績を残しているが、3日後のトッテナム戦──1月にアトレティコからトッテナムへ移籍したコナー・ギャラガーと再会する一戦でもある──を見据えれば、ソシエダ戦では大幅なローテーションに踏み切ると見るのが自然だ。

普段ベンチスタートの選手たちにとって、この試合はトッテナム戦のメンバーに食い込むためのアピールの場にもなる。バルセロナ戦ではベンチに控えながら出場機会を得られなかったティアゴ・アルマダロドリゴ・メンドーサにとっては、与えられた時間で何を見せるかが問われる一戦だ。特にバリオス不在の中盤はチームの最も手薄なエリアであり、メンドーサやオベド・バルガスにとって存在感を示す絶好の機会となるだろう。

グリーズマンの起用法も注目点のひとつだ。今季のリーグ戦ではラ・リーガ6ゴールのすべてを途中出場から決めており、「ジョーカー」としての役割が定着しつつある。一方でコパでは5ゴールを挙げてチーム最多得点者であり(Into the Calderón)、全ラウンドで得点を記録している。重要な試合でのスターターとしての能力は健在だ。ソシエダ戦は「コパ決勝の前哨戦」という位置づけもあり、グリーズマンを先発で送り出して対戦相手を直に観察させるという選択もあり得る一方、3日後のCLを考えれば温存して途中出場に回す判断も十分にあり得る。

フリアン・アルバレスはリーグ戦8ゴール、全コンペティションで13ゴールを挙げている今季のアトレティコの主力ストライカーであり、オビエド戦での劇的決勝弾に象徴される勝負強さを見せている。しかしトッテナム戦に向けて温存される可能性もあり、その場合はソルロート(今季リーグ戦9ゴール、全コンペティション15ゴール)がトップを務めることになるだろう。

マタラッツォの革命──ソシエダの変貌と前回対戦の教訓

今季のソシエダを語る上で、ペジェグリーノ・マタラッツォの存在を抜きにすることはできない。ニュージャージー州出身、イタリア系アメリカ人の48歳。ラ・リーガ史上初のアメリカ人監督として2025年12月に就任したこの指揮官は、低迷していたソシエダを短期間で再設計した。

前任のセルヒオ・フランシスコ体制(イマノル・アルグアシル退任後にBチームから昇格した「継続路線」の選択)ではリーグ戦20試合で4勝4分12敗、勝ち点1.0/試合という危機的な成績に沈んでいた。Opta Analystの分析が指摘する通り、ロビン・ル・ノルマンやマルティン・スビメンディ、ミケル・メリーノといった主力を失ったソシエダに必要だったのは「継続」ではなく「革命」だった。そしてマタラッツォはまさにそれを実行した。

戦術面での変化は劇的だ。アルグアシル時代のポゼッション志向から、より縦に速く、カウンターアタックを武器とするスタイルへ転換。PPDA(相手のパス数あたりの守備アクション)は10.1まで低下し、バルセロナ、エルチェ、セビージャ、アスレティックに次ぐリーグ5位の積極的なプレスを実現している。ボール保持のためのポゼッションではなく、奪ってから素早く前に運ぶ──この転換がソシエダの結果を一変させた。

個々の選手の変化も顕著だ。ゴンサロ・ゲデスは左サイドから内側に切り込む動きを得て、マタラッツォ体制下では90分あたり0.62ゴールという突出した数字を残している(Opta Analyst)。ミケル・オジャルサバルは深い位置に下がってボールを引き出し、再び前線に飛び出す動きでキャリアベストの得点ペースに乗っている(90分あたり期待ゴール0.57、過去の全監督体制を通じて最高値)。ベニャト・トゥリエンテスは中盤での球際の強さが際立ち、90分あたりのボール奪回数でラ・リーガの中盤選手の中でもトップクラスの数字を記録している。セルヒオ・ゴメスは攻撃的な左サイドバックとしてのポジションを得て、中盤へのインバートや高い位置でのクロスでソシエダの攻撃に幅をもたらしている。

1月4日の前回対戦は、マタラッツォの就任後まだ間もない時期の一戦だった。レアレ・アレーナでの1-1ドロー。ソルロートがジュリアーノ・シメオネのクロスからヘディングで先制し、直後にゲデスが久保のスルーパスを受けて同点弾を叩き込んだ。ESPNの試合レポートが記した通り「ソシエダの方がより大きな脅威を与えていた」後半の展開は、マタラッツォのチームがすでに形を成し始めていたことを示唆していた。

ただし、久保建英の不在は前回対戦時と大きく異なるポイントだ。1月の試合でゲデスの同点弾をアシストしたのは久保であり、ソシエダの攻撃に独特のクリエイティビティを加えていた。ハムストリングの負傷で離脱中の久保に代わって、カルロス・ソレールやアルセン・ザハリアンがその役割を担っているが、質的な違いは否めない。

注目ポイントとキックオフ情報

この試合で注目すべきポイントは3つある。

第一に、カンプ・ノウでの激戦からの回復度とローテーションの規模。バルセロナ戦からわずか4日、CLラウンド16のトッテナム戦を3日後に控える状況で、シメオネがどこまでメンバーを入れ替えるかがこの試合の性格を決定づける。大幅なローテーションが予想される中、普段ベンチスタートの選手たちにとっては、週明けのトッテナム戦に向けたアピールの場にもなる。

第二に、グリーズマンにとってのコパ決勝へのカウントダウン。MLS行きをシーズン終了後に先送りし、4月18日の決勝に照準を合わせつつあるグリーズマンにとって、この試合は決勝の対戦相手を「コパのライバル」という新しい目で見る最初の90分間になる。古巣との対戦自体は毎年のことだが、タイトルを懸けた関係性の中で対峙するのは、キャリアで初めてのことだ。そしてこのシーズンがアトレティコでの最後になる可能性がある以上、リヤド・エア・メトロポリターノでのソシエダ戦は、長い物語の終わりの始まりでもある。

第三に、コパ決勝の「前哨戦」としての駆け引き。両チームとも6週間後の決勝を意識している。相手のシステムや傾向を直接確認できる貴重な機会であると同時に、自らの手札をどこまで見せるかという情報戦の要素もある。特にソシエダはマタラッツォ就任後の新しい戦術体系が確立しつつある段階であり、決勝に向けてどこまで本来の形を披露するか──あるいはあえて隠すか──は興味深い視点だ。

2013年、シメオネはコパ・デル・レイ決勝でトロフィーを掲げた。あの時、彼の末息子ジュリアーノは電話越しにその歓喜を聞いていた。13年後、父と子は同じピッチに立ってコパ決勝を戦おうとしている。その舞台に向けた、最初のリハーサルが始まる。