最下位が突きつけた現実──xG 1.10 対 0.97
カルロス・タルティエレの土曜夜は、アトレティコにとって想定とはまるで異なるものだった。残留争いの渦中にあるレアル・オビエドをアウェーで叩く──優勝戦線に踏みとどまるために必要な「取りこぼさない試合」だったはずが、90分間の大半を苦しみ続ける展開となった。
ボール保持率62%という数字だけを見れば、アトレティコがゲームを支配したように映る。だが中身は正反対だ。FotMobのデータによればxGはオビエド1.10に対してアトレティコ0.97。シュート数16対12、枠内シュートに至っては6対1。最下位のチームに「撃たれ負け」した事実は、スコアラインの1-0からは読み取れない。
開始4分、フェデリコ・ビーニャスがイリャス・チャイラのクロスからヘッドで狙う。これが嚆矢となり、オビエドは前半だけで9本のシュートを放った。ギジェルモ・アルマダ新監督のもとで攻撃の意識を変えたオビエドは、セットプレーでもオープンプレーでもアトレティコの守備陣を脅かし続けた。対するアトレティコは前半5本のシュートを打ちながら枠内ゼロ。beIN Sportsによれば、前半5本以上のシュートを打ちながら枠内ゼロに終わるリーガのアウェー戦は2021年11月のカディス戦以来のことだった。最下位相手に押し込むことすらできない45分間は、チームの現在地を如実に映し出していた。
オブラクの壁──6セーブが意味するもの
この試合を0-0のまま後半に持ち込めたのは、ヤン・オブラクの存在に他ならない。90分間で記録した6セーブは、Into the Calderón評価8、FotMob 8.7(マン・オブ・ザ・マッチ)という圧倒的な数字に結実した。
最も危険だったのは前半アディショナルタイムの連続セーブだ。45+1分、チャイラが6ヤードボックス右からヘディングで叩きつけたシュートを、オブラクは右手一本でポスト側に弾き出した。直後のコーナーキックから今度はアルベルト・レイナがボックス右から右足で狙うと、これもオブラクが体の正面で受け止める。前半だけでチームを救う2連続セーブだった。
後半に入っても脅威は止まなかった。74分にはルカ・イリッチのスルーパスに反応したビーニャスがボックス左から左足で放ったシュートを正面でセーブ。そして90+1分、80分に投入されたサンティ・カソルラのコーナーキックからビーニャスが至近距離でヘディングを合わせた場面でも、オブラクが頭上でボールをキャッチした。41歳カソルラの正確なキックと、この試合最大の脅威だったビーニャスの組み合わせが生んだ最後の決定機を、守護神が最後の最後で封じた。
オブラクがチーム最高評価を受ける試合は、裏を返せばフィールドプレーヤーが十分に機能しなかったことの証左だ。だが同時に、こういう試合を落とさないオブラクがいるからこそ、シーズン終盤のビッグマッチが戦える。調子を上げてきた守護神の存在感は、3月に控えるコパ・デル・レイ準決勝やチャンピオンズリーグ・ラウンド16を見据えれば、何よりも心強い材料だった。
左サイドバックの矜持──フリオ・ディアス、デビュー戦の全力疾走
この試合でリーガ初出場を果たしたのが、21歳の左サイドバック、フリオ・ディアスだ。フェルナンド・トーレス率いるアトレティコ・マドリレーニョ(Bチーム)での働きがシメオネの目に留まり、トップチームでの先発という大きな機会を得た。
序盤、ディアスは相手右サイドのハイセム・ハッサンやナチョ・ビダルとの1対1に臆することなく対応した。27分にはバエナのパスを受けてボックス左から左足でシュートを放ち、攻撃参加の意欲も見せている。一方で、33分にはバックパスをミスして相手にボールを渡しかける危うい場面もあった。荒削りさと度胸が同居する、デビュー戦らしいパフォーマンスだった。Into the Calderónは6.5、FotMobは7.3と評価した。
しかし、フリオ・ディアスの名がこの試合の記憶に刻まれたのは、90+4分の出来事だった。左サイドでボールがタッチラインを割りそうになった瞬間、ディアスは全力で追いかけ、体を投げ出してボールをピッチ内に残した。このプレーからボールがつながり、最終的にアルバレスのゴールが生まれた。筆者としては、この場面はスコア以上の意味を持つものだったと感じている。フルタイムでこの試合を見ていたすべてのアトレティコファンの胸を打つプレーだった。才能ではなく、闘志でチャンスを生んだ。これこそがアトレティコの左サイドバックに求められる資質だ。
試合後、シメオネはディアスについてこう語った。
「フリオのことはとても嬉しく思う。非常によく働いていた。フェルナンド(トーレス)やマドリレーニョの選手たちにとっても重要なことだ。1部でプレーする準備ができている選手たちがいて、彼らがやってきた仕事が非常に良いものだとわかる。彼は人格を持ってプレーした。恐れずにリスクを取り、あの最後のプレーでボールが出ないように強く押し込んだ。そしてゴールが生まれた」
シボをかわした左足──アルバレス、4ヶ月ぶりにリーガのネットを揺らす
ハーフタイムにルックマンに代わってピッチに送り出されたフリアン・アルバレスは、この試合のヒーローとなる運命を静かに待っていた。
アルバレスのラ・リーガにおける前回のゴールは、11月1日のセビージャ戦まで遡る。実に約119日、リーグ戦でネットを揺らすことができていなかった。その間、コパ・デル・レイ準決勝第1戦のバルセロナ戦(4-0)で1ゴール1アシストを記録し、ゴール感覚が完全に失われていたわけではなかったが、リーグ戦での長い沈黙はチームの攻撃にとって大きな課題だった。
90+4分。左サイドでフリオ・ディアスがボールを残し、プレーが継続した。モリーナのクロスがボックス内でこぼれ、セカンドボールを拾ったアルバレスがクワシ・シボをかわし、左足でゴール右隅に流し込んだ。beIN Sportsによればゴール時刻は93分11秒。2024年12月のソルロートによるバルセロナ戦での決勝点(95分37秒)以来となる、終了間際の劇的な決着弾だった。xG 0.37のチャンスをxGOT 0.71のシュートに変えた冷静さが光った。
流れの中からのゴールだったことが、何より大きい。セットプレーでもPKでもなく、こぼれ球への反応と個人技で奪った得点。シーズン後半の大一番を勝ち抜くためには、こうした形でコンスタントにゴールに絡むアルバレスの存在が不可欠だ。ゴールの連鎖がコンディションの好循環を生み、コンディションの向上がさらなるゴールを呼び込む。その歯車がようやく、再び回り始めた。
シメオネは試合後、アルバレスの価値をこう表現した。
「ゴールはストライカーにとって常にインセンティブだ。彼は世界中から認められ、多くのチームが欲しがる非常に重要な選手だ。だが我々が彼を持っている。彼が持てる力のすべてを発揮してくれることを願っている。素晴らしいフットボーラーだから」
後半の転換──グリーズマンとジョレンテの投入効果
ハーフタイムのアルバレス投入に続き、シメオネは61分に3枚替えを断行した。ソルロートに代えてジュリアーノ・シメオネ、カルドーソに代えてグリーズマン、メンドーサに代えてコケ。さらに72分にはT.アルマダを下げてジョレンテを投入した。
ソルロートはブルージュとの連戦で5ゴールを挙げた勢いをこの試合に持ち込めなかった。FotMob 6.0、ItC 4。ダニ・カルボとダビド・カルモの堅いマークに封じられ、シュートはゼロに終わった。ルックマンもFotMob 6.0、ItC 4.5と低調で、前半のアトレティコは攻撃の糸口を見出せなかった。
転機は交代カードにあった。グリーズマンは投入直後からチームに創造性をもたらし、バエナへの決定的なスルーパスを供給した。このバエナのフィニッシュは86分にオフサイドで取り消されたが、グリーズマンのパス自体はInto the Calderónが「peach of a ball」と評する質の高さだった。コケは持ち前のボール配給力でポゼッションを安定させ、前半には見られなかったビルドアップのリズムを生んだ。ジョレンテは72分からの投入でフレッシュな推進力を中盤にもたらし、常にボールを前へ運ぶ姿勢を見せた。
グリーズマンとジョレンテが入ってから、アトレティコはようやくオビエドを押し込む時間帯を作り出した。彼らの存在が今のこのチームにとっていかに重要か、改めて浮き彫りになった後半だった。シメオネも試合後、グリーズマンについて「あの熱意と決意、後半に見せた重要なプレー、それこそが我々が彼に求めるもの」と語っている。
一方で気がかりなのは、カルドーソの状態だ。シメオネは会見でこう明かした。
「ドクターから、彼がハムストリングを触っていたと聞いた。今は無理をさせる状況にない。大事にしてプレーする。彼には、ドクターがハムストリングを気にしているのを見たと伝えたが、本人はプレーを続けられると言っていた。ただの違和感であってほしい」
3位浮上と次なる戦場
この日、同時刻に行われたバルセロナ対ビジャレアル戦でビジャレアルが敗れたことにより、勝ち点51で並ぶアトレティコが得失点差(+20 対 +17)で3位に浮上した。順位表の上には首位バルセロナが64ポイント、2位レアル・マドリードが60ポイント(1試合少ない消化)で並ぶ。13ポイント差は決して小さくないが、シメオネの言葉通り「上位との差を詰め、ラ・リーガで一貫性を保って戦う」ためには、オビエド戦のような試合を取りこぼさないことが何より重要だった。
次戦は3月4日、コパ・デル・レイ準決勝第2戦のバルセロナ戦。第1戦でメトロポリターノにて4-0と圧勝しており、突破は目前だ。その先にはチャンピオンズリーグ・ラウンド16のトッテナム戦が控える。
筆者として最も気がかりなのは、パブロ・バリオスの状態だ。この試合ではベンチにすら入っておらず、FotMobによれば負傷離脱中となっている。火曜のバルセロナ戦への出場は厳しいかもしれないが、3月のCLスパーズ戦には間に合わせてほしい。バリオスの不在がこの試合の中盤の低調さに直結していたとまでは言えないにせよ、彼がいれば前半のような一方的に押し込まれる展開は避けられた可能性が高い。ビッグマッチに臨むアトレティコには、バリオスが不可欠だ。
選手レーティング
先発
| 選手 | ItC | FotMob | 寸評 |
|---|---|---|---|
| オブラク | 8 | 8.7★ | 6セーブでチームを救った守護神。45+1分のチャイラへの連続セーブ、90+1分のビーニャスのヘッド処理が圧巻。文句なしのマン・オブ・ザ・マッチ |
| モリーナ | 5 | 7.3 | 前半は攻撃参加が停滞。G.シメオネやジョレンテとの連携で右サイドが不足。ただしAT最後のボックスへのクロスがアルバレスのゴールを呼んだ |
| ヒメネス | 4.5 | 7.5 | 読みの良さでボール奪取に貢献したが、ビーニャスのフィジカルに手を焼いた。ビルドアップの推進力にも欠けた |
| ル・ノルマン | 4.5 | 7.0 | カウンター対応は堅実だったが、地上戦のデュエルで不安定さが残った。45分にイエロー |
| フリオ・ディアス | 6.5 | 7.3 | リーガデビュー。荒削りだがエネルギーに満ちたパフォーマンス。90+4分に左サイドでボールを死守し、決勝点の起点となった |
| T.アルマダ | 5 | 7.4 | ドリブルでの前進を試み、キーパス2本を記録。ただし決定機には至らず。72分にジョレンテと交代 |
| カルドーソ | 6.5 | 6.6 | タックル3、クリアランス3、ブロック1と守備面で貢献。ハムストリングの違和感が懸念材料 |
| メンドーサ | 5.5 | 6.8 | エルチェから加入した2月移籍組。配球でサイドへ散らす場面はあったが、ファイナルサードへの突破には至らず |
| バエナ | 5 | 7.4 | チームトップのキーパス3本。86分にグリーズマンのパスからゴールネットを揺らしたがオフサイドで取消 |
| ルックマン | 4.5 | 6.0 | 左サイドでディアスと連携を試みたが、シュートは1本のみでブロックされた。HT交代 |
| ソルロート | 4 | 6.0 | ブルージュ戦の2試合5ゴールから一転、シュートゼロ。カルボとカルモの対人守備に封殺された |
交代出場
| 選手 | ItC | FotMob | 寸評 |
|---|---|---|---|
| アルバレス | 7 | 8.0 | 46分〜(←ルックマン)。119日ぶりのリーガ得点を90+4分に左足で決めた。セカンドボールへの反応とシボをかわす冷静さが光った |
| G.シメオネ | 5 | 6.5 | 61分〜(←ソルロート)。右サイドのスペースを広げる動きで間接的に貢献。突破の場面は限定的 |
| コケ | 5 | 6.6 | 61分〜(←メンドーサ)。投入後のポゼッション安定に寄与。サイドと前線への配球でビルドアップの質を向上させた |
| グリーズマン | 5.5 | 6.2 | 61分〜(←カルドーソ)。バエナへの絶妙なスルーパスは結果こそオフサイドだったが、投入後の創造性は明らか |
| ジョレンテ | 5.5 | 6.6 | 72分〜(←T.アルマダ)。フレッシュな脚で中盤に推進力を注入。常にボールを前へ運ぶ意識が見えた |
※ItCレーティングはInto the Calderón、FotMobレーティングはFotMob提供。★はFotMobマン・オブ・ザ・マッチ。