試合概要──3-3のスタートラインから、7-4の結末へ
6日前のヤン・ブレイデルスタディオンで、アトレティコは3-3のドローを持ち帰った。2点のリードを二度つくりながら、二度とも追いつかれた試合だった。トータルスコアは五分。あの夜の混沌を思えば、メトロポリターノで待つセカンドレグには不安と期待が等量で入り混じっていた。
シメオネが選んだスタメンには明確なメッセージがあった。第1戦で途中出場から存在感を示したソルロートを最前線に据え、エスパニョール戦で2ゴールを決めたばかりの好調を買った。その代償として、グリーズマンとルックマンがベンチに回った。コケとバエナを中盤に並べ、アルバレスがソルロートの隣に入る4-4-2。第1戦のスタメンから3人を入れ替える決断だった。
結果は4-1。2戦合計7-4。両チーム合わせて11ゴールが飛び交ったこの激戦で、アトレティコは2戦合計7得点を奪った。これは2013-14シーズンのミラン戦(2戦合計5得点)を上回り、同クラブのCLノックアウトラウンド史上最多得点記録となっている。
だが、スコアラインほど楽な試合ではなかった。前半のブルージュは持ち前のハイプレスとサイド攻撃でアトレティコを苦しめ、36分には同点に追いつき、直後にはオブラクのビッグセーブがなければ逆転を許していた。シメオネはハーフタイムに「彼らは勝つために攻めていた。我々は何のために攻めていた? プレッシングの強度と攻撃のポジショニングを上げなければならなかった」と修正を指示した。その言葉通り、後半のアトレティコは別のチームだった。
23分、オブラクのパントキック──ルートワンから生まれた先制点
先制点は、これ以上ないほどシンプルな形から生まれた。
23分、オブラクが前方にロングパントを蹴り出す。ボールは相手陣内の左サイドに落ち、ソルロートがメシェレを背中で受け止めながら収めた。ノルウェー人のストライカーは数タッチでボックス内に持ち込み、反転しながら左足でシュートを放つ。ミニョレの脇下をすり抜けたボールがゴールネットを揺らした。1-0。
ミニョレにとっては止めるべきシュートだっただろう。低く鋭い弾道だったとはいえ、ベテランGKの手と地面の隙間を通過した一撃には、ソルロートの巧みさ以上にミニョレの失策が色濃くにじんでいた。
このアシストはオブラクにとって、アトレティコでの529試合目にして初のものだった。世界最高峰の守護神が記録した、アトレティコでの公式戦初アシスト。パントキックの精度と判断の速さは見事で、ブルージュの最終ラインが整う前に一気にソルロートを孤立させた。GKからストライカーへの一本のパスで完結するゴール──シメオネのチームらしい、効率の極致だった。
ブルージュの反撃──36分オルドニェス、そしてオブラクが救った40分
しかしブルージュは怯まなかった。ヴェトレセンとツォリスを軸にサイドから圧力をかけ続け、36分にセットプレーから同点に追いつく。
ツォリスの左コーナーキックに対し、ニアサイドのメシェレがヘッドでフリック。ファーポストに詰めたオルドニェスが、至近距離からヘディングで押し込んだ。第1戦では自陣ゴールにボールを蹴り込んでしまったオルドニェスにとって、これは贖罪のゴールだった。カルドーソがマークを外してしまった代償は大きい。
この失点により、今季CLでのアトレティコのセットプレー被弾は8に達した。ペナルティを除けば大会全体で最多だ。高さのあるソルロートやハンコを擁しながら、セットプレー守備が構造的な弱点であり続けている。
さらに深刻だったのは40分の場面だ。ツォリスが左サイドからクロスを入れ、ゴール前でフリーになったヴェトレセンがダイビングヘッド。ほぼ確実にゴールと思われたが、オブラクが左手一本で弾き出した。ルッジェーリのマークが外れ、ヴェトレセンをフリーにしてしまったところから生まれたピンチだった。
前半を1-1で折り返すか、1-2でビハインドを背負うかは天と地の差がある。このセーブがなければ、後半の景色はまったく違ったものになっていただろう。先制点のアシストに加え、試合を壊しかねない失点を防いだオブラクは、この日ソルロートに次ぐ2番目のマン・オブ・ザ・マッチだった。
48分、カルドーソの一撃──アトレティコに欠けていたピース
後半開始わずか3分で、試合は動いた。
アトレティコのセットプレーの流れからG.シメオネが左サイドからクロスを上げる。メシェレがヘッドでクリアしたが、ボールはペナルティアーク付近にいたカルドーソの胸に収まった。アメリカ代表MFは冷静に胸トラップで落とし、右足を振り抜く。抑えの利いたシュートがゴール左隅に突き刺さった。2-1。ジョニー・カルドーソ、アトレティコでの記念すべき初ゴール。
「ベティスで見たものを見せるために連れてきた。アトレティコでプレーするのは簡単ではない。ジョニーは我々が望む道を歩んでいる」 ── ディエゴ・シメオネ(試合後会見)
筆者としては、このゴールに象徴されるカルドーソのミドルシュートの質が、今後のアトレティコにとって非常に大きな意味を持つと考えている。アトレティコがローブロックを敷いた相手の攻略に苦しむ理由のひとつは、ペナルティエリアの外から枠を捉えるシュートを打てる選手が少ないことだ。この日のカルドーソのように、クリアボールを拾って精度の高いミドルシュートに変換できるプレーに再現性があるならば、それはアトレティコの攻撃パターンに欠けていたピースそのものになる。
ソルロートの夜──ハットトリックとストライカーの覚醒
76分、この日の主役が2度目の歓喜をメトロポリターノにもたらす。
前線でロングボールを収めたソルロートを起点に、左サイドでルックマンがボールを受ける。グリーズマンとの素早いワンツーからルックマンが折り返したボールは、途中で相手選手に当たりコースが変わったが、結果的にゴール前のフリーのソルロートの足元へ。左足のサイドフットで冷静に流し込んだ。3-1。ブルージュの息の根を止める一撃だった。
87分、ダメ押しの4点目。コーナーキックの展開からルッジェーリがクロスを送ると、ファーポストでソルロートが待っていた。右足のワンタッチシュートをゴールに押し込み、ハットトリック達成。メトロポリターノが沸騰した。
アトレティコ史上、チャンピオンズリーグでハットトリックを記録したのはマリオ・マンジュキッチ以来2人目。2014年11月のオリンピアコス戦以来、約11年ぶりのことだ。今季全大会で15ゴール。グリーズマンとアルバレスの13ゴールを抜き、チーム内トップスコアラーに躍り出た。
以前のソルロートには、決定的な場面でシュートを枠外に外す、あるいはキーパーの正面に打ってしまう場面が散見された。だが、最近の彼は違う。エスパニョール戦での左足のダイレクトシュートとパワフルなヘディング、そしてこの日の左足サイドフット、反転シュート、右足のワンタッチ。3種類の異なるフィニッシュを1試合で披露したストライカーからは、ボレーもヘッドも以前よりも適切にミートできている技術的進歩が感じられる。エスパニョール戦からの直近4日間で5ゴール。議論の余地なく、今日のマン・オブ・ザ・マッチである。
交代策──シメオネの「決断」とルックマン=グリーズマンの化学反応
58分、シメオネはアルバレスを下げてグリーズマンを投入した。パフォーマンスを見れば妥当な判断だった。アルバレスはこの日、ソルロートとの2トップでうまく噛み合わず、存在感を示せないまま58分間を過ごした。ただ、頼もしい代役がベンチに控えているのだから、気負いすぎる必要はない。本人がどれだけ奮起できるか──それが今後の鍵になる。
70分にはバエナとコケを下げ、ルックマンとモリーナを投入。ここからピッチ上の化学反応が一変した。
ルックマンとグリーズマンの連携は、わずかな時間のなかで際立った。76分のソルロートの2点目は、まさにこの2人のコンビネーションが生んだゴールだった。パス交換のテンポ、走り出しのタイミング、スペースの使い方。彼らは同じプレービジョンを描けるタイプなのだろう。1月に加入したルックマンが、長年アトレティコの攻撃を担ってきたグリーズマンとこれほど早く呼吸を合わせられるのは、個人の質の高さだけでは説明できない。互いの動きを見て即座に最適解を選び取れる──そういう類の一致だ。
「ルックマンもグリーズマンも外すのは簡単ではなかった。アルバレスは最近よくプレーしていた。決断が必要で、私がその責任を取る」 ── ディエゴ・シメオネ(試合後会見)
シメオネは「ビッグネームだから」ではなく、試合の流れと選手の特性を見て決断したと強調した。その決断が裏目に出ることもあるが、この夜は見事に的中した。
85分のイエロー、そして残された課題
85分、ジョレンテがイエローカードを受けた。筆者としては、完全に不要なカードだった。試合は4-1、残り時間はわずか。勝利が確定しているなか、長い戦いを見据えた際にどこかでこの1枚が足を引っ張ることはほぼ確実だ。CLのカード累積規定を考えれば、軽率な判断と言わざるを得ない。
この試合を通じて、ルッジェーリの守備は不安定だった。相手ドリブラーに対して安易に足を出して置き去りにされるシーンが複数あり、前述のヴェトレセンのビッグチャンス(40分)もルッジェーリのマーク外れから生まれたものだ。攻撃面では87分のアシストという貢献があったものの、これまでの試合でも、ルッジェーリの守備から納得感を得られる機会は少ない。ItCの4.5という厳しい評価に対し、FotMobは8.5を付けているが、これは終盤のアシストとクロス成功率が数値を押し上げた結果だろう。守備面に限れば、引き続きアトレティコのウィークポイントのひとつである。
セットプレー失点の多さも、先に述べた通り構造的な課題だ。今季CLでの被弾8回は大会全体で最多。高さの優位を活かせるはずのメンバーを揃えながら、マークの受け渡しやゾーンの管理に改善の余地が残る。ラウンド16でリヴァプールやトッテナムと対峙する場合、セットプレーの精度は相手のほうが格段に高い。この弱点は早急に手を打つ必要がある。
数字で見るブルージュ・セカンドレグ
xG 2.10対1.75(FotMob)。アトレティコが効率的にチャンスを決め、ブルージュが作ったチャンスを封じた試合だったことが数字に表れている。
興味深いのはxGの内訳だ。オープンプレーではアトレティコが1.64対0.74と圧倒した一方、セットプレーでは0.46対1.00とブルージュが上回った。つまり流れのなかの攻撃ではアトレティコが完全に支配していたが、セットプレーではブルージュに脅威を与えられ続けていたという二重構造の試合だった。
ポゼッションは45%対55%。パス成功率84%対88%。デュエル勝率38勝(45%)対48勝(55%)。ボックス内タッチ29対26。数字の多くでブルージュが優勢だったにもかかわらず、スコアは4-1。アトレティコの「持たれても勝つ」というDNAが、この夜もはっきりと現れた。シュート14本のうちエリア内から10本を放ち、5本を枠内に飛ばした。ブルージュのエリア内シュートは5本。ボックス内での決定力の差が、そのまま結果に直結した。
グリーズマンの未来──「彼は自分が望むものを選ぶ資格がある」
試合後の記者会見で、シメオネはグリーズマンの将来について問われた。
「彼のために発言するつもりはない。彼のことを深く愛しているし、多くのことを話し合った。彼が最善と思うもの、望むものを選んでほしい。それだけの資格がある」 ── ディエゴ・シメオネ
アトレティコのセレソ会長が「グリーズマンが今季終了までクラブに残ることは確定していない」とも取れる発言をしたことが、この質問の背景にある。最近ではMLSへの移籍が噂として取り沙汰されている。
この夜のグリーズマンは、58分にピッチに入ってからわずか30分強のプレーで、ルックマンとの連携からソルロートの2点目をお膳立てした。35歳の誕生日を来月に控えてなお、彼がボールに触れた瞬間の判断速度と視野の広さは別格だ。ルックマンとの化学反応もそうだが、グリーズマンがピッチにいるだけで周囲の選手の動きの質が上がる。それはデータには表れにくいが、試合を見ている者には明白な価値だ。
筆者としての見解を率直に述べれば、グリーズマンはこのチームに欠かせないピースであり、紛れもないレジェンドだ。2027年の契約満了まで残ってほしい。だがそのためには、彼自身がこのチームでプレーすることに楽しさと興奮を感じ続けられるかどうかにかかっている。スタメン起用が減り、ベンチスタートの試合が増えるなかで、その炎を灯し続けられるか。シメオネの言う「彼には選ぶ資格がある」という言葉は、敬意であると同時に、クラブとして引き止める絶対的な保証はできないという現実の裏返しでもある。
視座──ラウンド16へ、partido a partido
アトレティコは2013-14シーズン以降、11度目のチャンピオンズリーグ・ラウンド16進出を果たした。同期間でこれを上回るのはバイエルン・ミュンヘンとレアル・マドリード(各13回)、マンチェスター・シティとパリ・サンジェルマン(各12回)の4クラブのみ。欧州のエリートクラブと肩を並べるこの安定感は、シメオネ政権の信頼性の証だ。
ラウンド16の対戦相手は、2月27日(金)の抽選でリヴァプールかトッテナムのどちらかに決まる。リーグフェーズ3位のリヴァプール、4位のトッテナム。どちらが来ても厳しい相手だが、この夜のパフォーマンスは自信になるはずだ。
ラ・リーガでは4位、勝ち点48。首位バルセロナ(61pts)との差は13ポイント。リーグ優勝は現実的に厳しい。だからこそ、CLとコパ・デル・レイが今季の命運を握っている。コパではバルセロナとの準決勝第2戦が控え、第1戦のアドバンテージ(4-0)を活かして決勝に進めるかが次の関門だ。
まずは週末のオビエド戦。そしてバルセロナ、CL ラウンド16へ。パルティード・ア・パルティード──一試合一試合。第1戦の3-3から立て直したこの夜のように、一つひとつの試合で修正し、前に進む。それがシメオネのチームの生き方だ。
選手評価
先発メンバー
| 選手 | ItC | FotMob | 寸評 |
|---|---|---|---|
| オブラク | 7 | 9.1 | 40分のビッグセーブで試合を救い、23分のパントキックでアシストを記録。529試合目の初アシスト。ソルロートに次ぐこの日のMOM。 |
| ジョレンテ | 6.5 | 7.0 | 攻守にバランスの取れた働き。ただし85分の不要なイエローは看過できない。 |
| プビル | 6 | 7.1 | 目立たないながらも堅実な守備でラインを安定させた。分配の質もまずまず。 |
| ハンコ | 7 | 7.9 | 今季の最終ラインの柱。対人の強さとスイーパー的なカバーリングで中央を締めた。 |
| ルッジェーリ | 4.5 | 8.5 | 87分のアシストは見事だったが、守備面では不安が残る。ヴェトレセンのフリーヘッドはルッジェーリのマーク外れから。ItCとFotMobで4ポイントの乖離があるが、アシストとクロス成功数が数値を押し上げた結果だろう。 |
| G.シメオネ | 7 | 6.9 | 献身的な守備とサイドを突破するランで貢献。カルドーソのゴールにつながるクロスの起点も。 |
| カルドーソ | 6.5 | 8.2 | 加入後初ゴール。胸トラップからの右足ミドルシュートは圧巻。守備でもインターセプトを連発。 |
| コケ | 6 | 6.8 | 中盤でのボール循環と展開で安定感を提供。70分で交代。 |
| バエナ | 4 | 6.5 | 失点につながるCK前のボールロストが痛かった。攻撃面でも際立つ場面は少なく、精彩を欠いた。 |
| ソルロート | 10 | 9.7 | 文句なしのMOM。3種類のフィニッシュでハットトリック。ATM史上2人目のCLハットトリック。今季全大会15ゴールでチーム内トップ。 |
| アルバレス | 4 | 6.5 | ソルロートとの2トップで噛み合わず、58分で交代。存在感を示せなかった。 |
交代出場
| 選手 | ItC | FotMob | 寸評 |
|---|---|---|---|
| グリーズマン(58分〜←アルバレス) | 6 | 6.6 | ルックマンとの連携でソルロートの2点目を演出。短い時間で存在感を示した。 |
| モリーナ(70分〜←コケ) | 5 | 6.1 | 守備固めの役割を担い、右サイドの安定に貢献。攻撃面での関与は限定的。 |
| ルックマン(70分〜←バエナ) | 6 | 6.6 | 76分のソルロートへの折り返しが最大の見せ場。グリーズマンとの連携の質が光った。 |
| ヒメネス(83分〜←G.シメオネ) | N/A | ─ | 出場時間が短く評価対象外。 |
| メンドーサ(83分〜←カルドーソ) | N/A | ─ | 出場時間が短く評価対象外。 |