アトレティコ
vs
アーセナル

コパの傷を抱えて、CL準決勝へ

アトレティコ・マドリードがチャンピオンズリーグ準決勝に立っている。リーグフェーズを14位で通過してプレーオフへ回り、クラブ・ブルージュを通算7-4、ラウンド16でトッテナムを7-5、準々決勝でバルセロナを通算3-2で退けてここまで来た。今季のCL通算34得点はクラブの欧州カップ/チャンピオンズリーグにおける単一シーズン最多であり、プレーオフ以降の3ラウンドだけで17得点を積み上げている。CLの得点面に限れば、攻撃力は数字の上で確かな説得力を持っている。

一方で、直前のコパ・デル・レイ決勝はレアル・ソシエダにPK戦で敗れた。2-2のまま延長を終え、GKウナイ・マレーロにPKを2本止められての結末は、勝機を逃した感触を残した。アスレティック戦では3-2で勝利したものの、直近数試合を通じて内容と結果の安定感を欠いていることも否定できない。

それでも、コパ決勝後の会見や直近の試合後コメントでは、シメオネから切り替えと前進の必要性が語られてきた。CLは今季残された最大の主要タイトル獲得のチャンスである。準決勝を前にメトロポリターノが大きな期待に包まれていること、そしてシメオネがサポーターの信頼と後押しに言及していることも含め、ホームで何を見せるかという姿勢は揃いつつある。前回エミレーツで0-4と崩された相手にどう立ち向かうかではなく、ホームで何を仕掛け、どこで主導権を握るかが問われる試合である。

あの0-4から半年、両軍はどう変わったか

同じカードはリーグフェーズ第3節、2025年10月21日にエミレーツで実現している。スコアは、アトレティコから見て0-4。57分以降、ガブリエウ・マガリャンイス、ガブリエル・マルティネッリ、そしてヴィクトル・ギェケレシュの2得点で一気に押し切られた。前半は持ちこたえていたが、後半にセットプレーと失点後の守備の乱れを重ね、短時間で試合を失った。

ただ、あの試合からアトレティコの構成は変わっている。2026年2月にアタランタからアデモラ・ルックマンを完全移籍で獲得し、攻撃の選択肢は増えた。コパ決勝でも得点を決めるなど、大きな試合で違いを作れる選手であることは加入後の数か月でも示している。アーセナルにとっては、10月時点では計算に入っていなかった攻撃のオプションである。

アーセナルの強さも、この半年で揺らいだわけではない。今季CLは12試合無敗(10勝2分)、8試合をクリーンシートで終えており、ノックアウトでもレバークーゼンを通算3-1、スポルティングを通算1-0で抑えてきた。プレミアリーグでも依然として首位に立ち、シティとの差はニューカッスル戦勝利で勝点3に広がった(シティは1試合未消化)。CL無敗を維持しながらリーグ首位を走り続けていること自体、十分に評価されるべき達成である。

もっとも、シティに追い上げられている状況であることも事実で、CLとリーグの並走による負荷は当然かかっている。CLでの大量得点ラッシュという印象も薄れており、ノックアウト4試合で挙げた得点は4。エゼのニューカッスル戦での決勝点のように個の一撃で局面を動かす力はあるが、リーグフェーズ序盤のように圧で押し切る試合ばかりではない。アーセナルにとっても、コンディション面に不安を抱えての準決勝という側面はある。

両軍の欠場者と、直前まで読めない選手たち

アトレティコ側で最も大きな痛手は、パブロ・バリオスである。直近のハムストリング離脱から復帰したばかりだったが、25日のアスレティック戦で後半途中に再び筋肉系の違和感で交代した。クラブは左大腿部の筋損傷と発表しており、少なくとも第1戦は欠場、両戦を通じて出られない可能性が高い。今季のシメオネの中盤構成において、フィット時のバリオスは最優先候補のひとりだっただけに痛い。

センターバックでは、ホセ・マリア・ヒメネスが間に合わない見込み。一方、足首を痛めていたダビド・ハンツコは直近のチーム練習に復帰したと報じられているが、実戦復帰の可否までは慎重に見る必要がある。ルックマンも筋肉系の問題を抱えており、起用できるかは直前判断になりそうだ。アスレティック戦は両者ともメンバー外だったため、最終的な可否はメトロポリターノでの直前判断に持ち越される可能性がある。アレクサンダー・ソルロートはアスレティック戦で2得点を挙げており、前線の選択肢として戻っている。

アーセナル側も無傷ではない。ニューカッスル戦ではカイ・ハヴァーツが前半途中に、エベレチ・エゼが後半早々に、それぞれ筋肉系の違和感で交代した。アルテタは大きな問題ではないという趣旨で説明したものの、いずれもこの試合に向けては直前の状態確認が必要な選手である。ブカヨ・サカはニューカッスル戦で5試合ぶりに途中出場で復帰しており、先発に戻れるかが焦点になる。リカルド・カラフィオーリは4月7日のスポルティング戦以来公式戦から離れており、ユリアン・ティンバーとミケル・メリーノも負傷で離脱中。マルティン・スビメンディはニューカッスル戦で体調不良を抱えながらプレーしたと伝えられており、アウェイ遠征へのコンディションは確認事項として残る。

両軍ともにベスト布陣には届かない可能性が高い。ここはアトレティコにとって分岐点になりそうだ。アーセナルが攻撃陣の重要な選択肢であるエゼ・ハヴァーツを完全な状態で送り出せないなら、メトロポリターノで主導権を握る現実的な機会は開いている可能性がある。

どこで主導権を握るか――プレスと中盤の攻防

アーセナルはミケル・アルテタの下で、ボール保持から相手陣で時間を作ることを得意とする。デクラン・ライス、マルティン・スビメンディ、マルティン・ウーデゴールの中盤は、プレッシャーの中でもボールを動かして局面を整え直す力を持つ。筆者の見立てでは、アトレティコがエミレーツで4失点した試合の問題のひとつは、後半に入って前線からの圧が落ち、相手に主導権を渡したことにあった。

したがって、最前線でのプレスの質と継続性が、この試合の最大の焦点になる。CL準々決勝のバルセロナ戦、そしてラウンド16のトッテナム第1戦で見せたように、アトレティコは相手のミスを誘発し、そのまま仕留めることで主導権を握ってきた。アーセナルはCLで8試合のクリーンシートを記録しており、自陣でボールを安定して動かせる時間を与えるほど、彼らの良さが出てしまう。逆に言えば、ボールを安心して持たせない時間を作れるかどうかで、試合の様相は変わる。

守備面では、サイドの噛み合わせが鍵になる。アーセナルはマルティネッリ、サカの両ウイングが、サイドバックを引き出してから内側のスペースを使う形を狙える。ヒメネス不在が濃厚な最終ラインで、ハンツコのコンディションがどの程度かは、そのまま守備の安定度に直結する。最も重要なのは、相手のサイドアタックの起点を低い位置で潰し、二次攻撃に持ち込ませないことだろう。

注目選手

フリアン・アルバレス

アルバレスをここに置くのは、ゴールへの期待だけが理由ではない。相手のビルドアップを落ち着かせないために、最前線からのプレスは不可欠であり、その出力を決めるのがアルバレスである。CL準々決勝のバルセロナ戦や、トッテナムとのラウンド16で見せたように、相手の最終ラインに余裕を与えず、ミスを誘発して仕留める形は、アトレティコが主導権を握るうえで重要になる。アーセナルのCBコンビ、ガブリエウ・マガリャンイスとサリバの組は、自陣で時間がある状態では極めて落ち着いたプレーを見せる。逆に言えば、その時間を奪うことができれば、いつもの彼らとは違う判断を迫ることができる。

ジョニー・カルドソ

バリオスを欠く以上、ジョニー・カルドソは中盤の候補として重要になる。アーセナルには中盤の名手が並ぶ。ここで質的に劣ってしまうと、ボールも時間も奪われ続ける展開になりかねない。ジョニーが起用されるなら、インターセプトとセカンドボール回収でラインを押し上げられるかが、試合のテンポを左右する。

相方は誰になるか。経験と空間管理ではコケが安定し、走力と縦への推進力ではマルコス・ジョレンテが優位となる。アーセナルのプレッシングを剥がす局面が多くなりそうな試合の性質を考えると、相方が誰になるかはシメオネが決めるべき論点のひとつである。

アデモラ・ルックマン

ルックマンがメトロポリターノでスタートから出られるかは、ピッチに立つまで分からない。ただ、起用可能であれば、アーセナルにとって大きな脅威のひとつになる。コパ決勝で得点を決めるなど、大きな試合で違いを作れる選手であることはすでに見せている。短い出場時間でも試合を変えられる選手であり、ベンチに置く選択肢としても価値が大きい。

キックオフと観戦のポイント

キックオフは4月29日(水) 21:00 CEST、日本時間では4月30日(木) 4:00 JST。会場はエスタディオ・メトロポリターノ。チケット需要の大きさも報じられており、満員に近い後押しが見込まれる。

気持ちの面では、アトレティコにこそ追い風がありそうだ。アーセナルはプレミアの首位争いの最中にあり、CL準決勝とリーグの並走は当然ながら負荷をかける。一方のアトレティコはCLが今季残された最大の主要タイトル獲得のチャンスであり、コパ決勝の悔しさをぶつける場でもある。シメオネが繰り返し言うように、いま信じるべきなのはチームと、メトロポリターノを埋めるサポーターの存在である。

第1戦をどう終えるか、特にホームで失点を最小限に抑えられるかが、ロンドンでの第2戦の前提を決める。試合後はマッチレポートをお届けする。