「フルテストの時間」になるはずだった前半
アーセナルとのチャンピオンズリーグ準決勝第1戦を4日後に控えたこの土曜日、ディエゴ・シメオネが選んだ11人は「温存」と呼ぶには本格的すぎるものだった。フリアン・アルバレスはベンチ入りしながら起用されなかったが、それ以外は主力級が並んだ。3月14日以来勝てていないラ・リーガで、まずは流れを断ち切る。チームに必要なのは、何よりも勝ち点だった。
しかし立ち上がりは重かった。3分、ガラレタの折り返しからアイトール・パレデスがフリーで合わせ、オブラクの好守でしのぐ場面。23分、再びセットプレーからやられる。ラングレとオブラクの間でコミュニケーションが乱れて与えたコーナーを、ラングレを上回ったパレデスが頭で叩き込んだ。前半終了時点でアトレティコのシュートはわずか1本。アスレティック・クラブが3本。スコア以上に、アーセナル戦への助走としては物足りない45分だった。
ハーフタイムで何が変わったか ── バエナという解
アレックス・バエナは試合後、ハーフタイムにシメオネから受け取った言葉をこう語っている。
「楽しめ、勝ちに行け、もう失うものはないんだ、と。少しだけ気が楽になった。あの連敗が体に残していたプレッシャーが、ふっと外れた感じがした」(DAZN)
49分。パブロ・バリオスから左サイドのバエナへ。バエナはペナルティスポット付近へ低いクロスを通し、完全にフリーで待っていたアントワーヌ・グリーズマンが滑り込みながらコースを変えた。相手選手に当たったこぼれ球を押し込んだ形になったため、アシスト記録はついていないが、後半の流れを変えた起点にバエナがいたことは映像でも明らかだ。グリーズマンのラ・リーガ得点は12月以来。
54分、今度はバリオス自身が中央でボールを奪い、3対3のカウンターを仕掛ける。アレクサンダー・ソルロートにつけ、ソルロートはバエナとワンツーで戻されたボールをそのままウナイ・シモンとの1対1で冷静に流し込んだ。10分間で2点。後半開始からこれだけの内容を実行したのだから、ハーフタイムで何が起きたのかは想像に難くない。
そしてバエナは試合後、もう一つの言葉を残している。「数か月ぶりに自分らしくプレーを楽しめた、自分自身に戻れた感覚があった」。アーセナル戦を前に、バエナがこのタイミングでリズムを取り戻した意味は小さくない。まずは90分を戦った疲労を抜き、もう一度大舞台に立てる状態に整えてほしい。
ソルロートのブレース、xG 2.09が示す試合の本当の姿
最終スタッツは、表面の印象とはかなり違う数字を返してくる。Fotmobによると、xGはアトレティコ2.09に対しアスレティック0.80。ビッグチャンスは6対3。シュート総数では6対12と相手を下回ったが、決定機の質ではアトレティコがはっきり上回った試合だった。「多く打った試合ではなく、より良い場所から打った試合」と言える。
その出口に立っていたのがソルロートだ。54分の冷静な左足、そして90+3分。ナウエル・モリーナがアスレティックの攻撃を遮断し、一気に縦へ送ったボールに、ソルロートはパレデスの背後を完全に取って抜け出した。出てこなかったウナイ・シモンを尻目に、強烈なクロスショットでネットを揺らす。チームのシュート6本のうち5本をソルロートが放ち、デュエル11/16勝、空中戦8/10勝。FotMob 9.1という評価は、攻撃の出口がこの男に集約していたことを物語っている。
ひとつだけ気がかりなのは、3点目の直後にソルロートが左膝に手をやり、シメオネがベンチで一瞬表情を曇らせた場面だ。すぐにジョグして問題なさそうではあったが、アーセナル戦を前に、彼の体だけは万全であってほしい。
バリオスの負傷、交代で入ったカルドーソ
逆転弾の起点になった4分後、その同じバリオスが倒れた。58分、中盤での競り合いの直後、自らボールをタッチに出して交代を要請。ピッチに横たわる背番号8のもとに駆け寄った仲間たち。クラブ公式(@Atleti)の発表は現時点で「左太ももの筋肉系違和感を感じ、後半に交代。追加検査の結果待ち」というところまでだ。
部位を「ハムストリング」と言い切るメディアも複数あるが、正式診断前である以上、本記事ではクラブ発表の表現に留める。確かなのは、これが3か月で3度目の筋肉系トラブルだということだ。2月5日のコパ・デル・レイ、ベティス戦で右大腿部を痛め、3月にはトッテナム戦で復帰した直後のトレーニングで再び右大腿部を負傷。そして今回、左大腿部の筋肉系違和感で交代を余儀なくされた。シメオネは試合後、こう語った。
「人生はしばしば我々の道に障害を投げてくる。今年彼は怪我というかたちでそれに向き合っている。これを学びの経験として受け止め、強さと決意で乗り越えてほしい」
「試合前に彼に伝えた。私は彼に大きな信頼を置いている。彼は我々にとって非常に重要な選手で、我々は彼を待っている。深刻でないことを、シーズン終盤を一緒に過ごせることを願っている」
バエナもDAZNの取材にこう答えている。「パブロは僕の友人だ、ああいう姿を見るのはつらい。年初に自分も同じことを経験したから、何を感じているかわかる。彼は誰よりも体のケアをしている選手だ。サッカーには時々こういうことが起きる。最小限であってほしいと願うばかりだ」。
筆者としては、ここで一度立ち止まりたい。この3か月、復帰しては再発を繰り返してきた身体に、アーセナル戦という最大のステージを背負わせるのは酷だ。今季はもう焦らせず、来季に万全の体で戻ってきてほしい。彼の才能は、無理をして失うには大きすぎる。
バリオスの代わりに58分に入ったのはジョニー・カルドーソだった。今日のジョニーの評価はメディアによって割れている。FotMobは7.2の高評価をつけた一方、Into the Calderónは5.0に留めた。69分、オイアン・サンセトの右足の斜めのシュートを身体を投げ出して止めた場面のように、リード後のクローズに必要な強度は確かに見せた。バリオスの出場可否が不透明になるなら、カルドーソが中盤の中心候補の一人になる可能性は高い。だがこの試合だけで「中心」と言い切るより、守備強度とボール保持の両面で、彼が90分を通してどこまで担えるかをアーセナル戦で見たい。
90+7分の不要な失点 ── モリーナの光と影
90+3分のソルロート3点目の起点は、ほかでもないモリーナのファストブレイクからのスルーパスだった。最終ラインを切り裂くタイミング、ボールの速度、ソルロートの走路への合わせ方。すべてが噛み合った逸品だった。
ところがその4分後、アスレティック右サイドからアレハンドロ・レゴが上げたクロスに、ファーポストでモリーナを身体一つ振り切ったゴルカ・グルセタが頭で合わせた。Into the Calderónは「モリーナがグルセタに上回られた」とこの場面を評している。3点目を導いた右サイドバックが、直後の失点では守備対応を問われる。光と影が同じ数分の中に並んだ。
勝ち切ったのは良かった。しかしこの失点は不要だった。アーセナル戦に向けて、終わり方の質はもう一度問われるべきだ。
順位と次戦 ── アーセナル第1戦への設計図
試合後、アトレティコは4位・勝ち点60を維持。3位ビジャレアル(62、1試合未消化)との差は2ポイント。シメオネは記者会見で「ビジャレアルとの差を縮めることがラ・リーガでの目標」と改めて口にし、3位という具体的な目印を示した。
そして4月29日、リヤド・エア・メトロポリターノにアーセナルがやってくる。バエナは「シーズンで最高のメトロポリターノを期待している。これが今季最も重要な試合だ」と語った。シメオネも「アトレティコがチャンピオンズの準決勝・決勝に到達するまでの道のりは、決して楽なものではなかった。ここまで来られたのは努力と、ファンの支えのおかげだ。今こそ彼らの力が必要であり、彼らが望むものをピッチで返したい」と応じた。
筆者としての予想を一つだけ書く。ベンチ入りしながら起用されなかったフリアンを中心に、前線から絶え間なくプレスをかけて相手を圧力鍋に閉じ込める。これがアーセナル戦の答えになるのではないかと考えている。バリオスの出場可否が不透明になるなら、中盤の設計はカルドーソとコケの組み合わせ、あるいはマルコス・ジョレンテを再び中盤に上げる案、加えてオベド・バルガスやロドリゴ・メンドーサのような若手の起用まで含めて、シメオネに難しい選択を迫ることになる。今季のアトレティコは、難しい局面ほど力を出してきた。あと4日。準備の時間は短いが、十分だ。
プレーヤーレーティング
| 選手 | ItC | FotMob | 寸評 |
|---|---|---|---|
| オブラク | 4 | 6.1 | 2分の好セーブで一度はチームを救った。2失点はいずれもヘディングで止めにくいものだったが、評点は伸びなかった |
| ルッジェーリ | 4.5 | 7.3 | ニコ・ウィリアムスを抑え込んだ守備は及第点。攻撃面での絡みは少なく、メディア評価は割れた |
| ラングレ | 4 | 7.2 | 23分のCK与え方、パレデスへの対応の甘さ。FotMobはクリアランスを高評価したがItCは厳しい |
| プビル | 4.5 | 7.4 | パレデスへの対応はItC基準では物足りないが、25分のグルセタからウナイ・ゴメスへのライン突破を防いだプレーは秀逸 |
| マルコス・ジョレンテ | 5 | 6.7 | 右サイドバックでニコ・ウィリアムスの突破を遅らせた。攻撃参加は限定的 |
| アレックス・バエナ | 7.5 | 7.6 | 2得点いずれの起点。リーガ加入後、最もバエナらしい90分。本人も「数か月ぶりに楽しめた」 |
| コケ | 6 | 7.3 | 前半は機能せず、後半は8本のファイナルサードへのパスで攻撃を整理した |
| パブロ・バリオス | 7 | 6.8 | 2月以来の先発で2得点に直接関与。負傷交代まで「これが彼だ」というプレーを見せた57分間 |
| ジュリアーノ・シメオネ | 4 | 7.1 | 37分のクロスからソルロートのヘッドを演出。アスレティックの高い守備ラインに苦しんだ |
| アレクサンダー・ソルロート | 8 | 9.1★ | 2得点、デュエル11/16勝、空中戦8/10勝。FotMobマッチMVP。3点目直後の左膝の違和感だけが懸念 |
| アントワーヌ・グリーズマン | 6.5 | 7.5 | 49分に同点弾、リーガ得点は12月以来。Mundo DeportivoはMVPに彼を選出 |
| 選手 | ItC | FotMob | 寸評 |
|---|---|---|---|
| ジョニー・カルドーソ | 5 | 7.2 | 58分〜(←バリオス)。守備強度を上乗せ。69分のサンセトへの対応は秀逸。評価は媒体間で大きく割れた |
| ナウエル・モリーナ | 6 | 7.2 | 63分〜(←ジョレンテ)。90+3分の3点目を演出した一方、90+7分の失点ではグルセタに振り切られた |
| ニコ・ゴンサレス | 5 | 6.1 | 63分〜(←グリーズマン)。先日のブレースの勢いをこの試合では出せず、リード守備に専念 |
| ロビン・ル・ノルマン | 5 | 6.4 | 72分〜(←G・シメオネ)。守備時間帯のクリアランスでチームを助けた |
| オベド・バルガス | 5 | 6.6 | 72分〜(←コケ)。タックル2、クリアランス2、ブロック1。守備強度に貢献 |