クラブ別のSCRは、 外からは正確に出せない
プレミアリーグの各クラブがSCR(スカッド・コスト・レシオ)の85%のラインにどれだけ近いかは、外からは確かめにくい。2026/27の判定は2027年3月1日で、この記事の数字はそれより前に決算書から作った目安であり、リーグの判定ではない。他クラブの順守状況は、クラブ同士でも原則として開示を受けられない。各クラブの決算から筆者が計算した目安では、プレミアの決算で比べられる15クラブのうち、チェルシーとノッティンガム・フォレストが2通りの計算のどちらでも上位2つを占める。欧州大会に出るクラブには、これとは別にUEFAの70%の上限もかかる。表の数字は決算書から作った目安で、公式のSCRとは計算の中身が違う。2通りの目安の計算式と、それで出したクラブ別の表は、以下に載せた。
計算には、各クラブが英国の会社登記所に出した決算(マンチェスター・ユナイテッドは米国の証券取引委員会に出した年次報告)を使った。決算期はユナイテッドが2026年6月、ほかの19クラブは2025年5〜7月で、決算期末より後の移籍は表に入っていない。2026/27の判定では、クラブ側の収入に2025-26期の決算を使い、選手の売買も冬の移籍市場の分まで反映する。グリーンとレッドのラインや罰則の仕組みは、SCRのルールのコラムで詳しく説明している。
決算の数字と公式の計算では、入る費用と収入が違う。決算書の人件費は全従業員の合計で、事務や営業の職員、アシスタントコーチの給与も含むが、SCRに入るのは契約選手と監督の分だけで、女子チームとアカデミーの費用も入らない。公式の計算では、分母に季前に固める見込み収入を使い、商業収入には£1,500万の下限がある。物販は粗利だけ、スタジアムで開くサッカー以外の興行は純利益だけを入れ、飲食や物販を外部に任せているクラブには、自営との差を足し戻す調整もある。選手の売却益は、目安には決算期1年分をそのまま足したが、公式の計算ではおよそ3年分の売却損益を平均して入れる。ほかの年より売却益の大きい年の決算ほど、目安は公式より低く出やすい。
プレミアの決算で比べると、 目安Aは64%から106%まで開く
目安Aは(人件費+選手登録の償却と減損)÷(売上+選手の売却益)で、のれんやソフトウェアの償却は入れていない。代理人手数料は償却費に含まれる分もあるが、別の項目としては足していない。今回確認した決算資料の中では、クリスタル・パレスが選手の給与を別に載せていて、2024-25期は£1億1,083万と人件費全体の£1億4,829万の約75%にあたる。目安Bは、仮に人件費の75%を選手と監督の分とみなした同じ計算で、1クラブの割合をほかのクラブに当てはめているので、これも仮定の上の数字である。どちらも小数点以下を四捨五入した。償却については、移籍金の会計のコラムで解説している。
下の表は、2024-25季から今季まで続けてプレミアにいる15クラブを、目安Aの高い順に並べたもの。
| クラブ | 決算期 | 目安A | 目安B | 注記 |
|---|---|---|---|---|
| チェルシー | 2025年6月期 | 106% | 90% | 持株会社の連結決算 |
| ノッティンガム・フォレスト | 2025年6月期 | 105% | 87% | クラブ単体の決算 |
| フラム | 2025年6月期 | 97% | 79% | |
| ニューカッスル | 2025年6月期 | 97% | 80% | 選手・スタッフ登録の売却益を使用。固定資産と子会社の売却益は除外 |
| ブレントフォード | 2025年6月期 | 89% | 73% | ムベウモらの売却益は翌期 |
| エヴァートン | 2025年6月期 | 89% | 72% | 物販と飲食は外部委託 |
| アストン・ヴィラ | 2025年6月期 | 88% | 72% | 期中に女子チームをグループ外へ移した |
| ボーンマス | 2025年6月期 | 83% | 69% | クラブ単体の決算。売却益が大きい |
| ブライトン | 2025年6月期 | 82% | 69% | 売上に住宅・商業開発の収入£2,030万を含む |
| クリスタル・パレス | 2025年6月期 | 77% | 63% | 選手の給与を別に載せている |
| マンチェスター・シティ | 2025年6月期 | 73% | 60% | クラブ単体の決算。小売は外部委託 |
| リバプール | 2025年5月期 | 72% | 58% | 持株会社の連結決算 |
| マンチェスター・ユナイテッド | 2026年6月期 | 70% | 60% | 2025年6月期は71%と60% |
| アーセナル | 2025年5月期 | 69% | 58% | 減損£1,524万を含む |
| トッテナム | 2025年6月期 | 64% | 54% | 売上にサッカー以外の興行を含む |
残りの5クラブは、今季の昇格組か、決算が2部のシーズンのものなので、上の表とは並べられない。
| クラブ | 決算期 | 目安A | 目安B | 注記 |
|---|---|---|---|---|
| コヴェントリー | 2025年5月期 | 109% | 91% | 2部の決算。今季昇格 |
| リーズ | 2025年6月期 | 94% | 78% | 2部の決算。2025-26に昇格 |
| ハル・シティ | 2025年6月期 | 80% | 64% | 2部の決算。今季昇格。人件費が売上を上回る |
| サンダーランド | 2025年7月期 | 75% | 59% | 2部の決算。2025-26に昇格。売却益が売上を上回る |
| イプスウィッチ | 2025年6月期 | 65% | 54% | この期はプレミア。2025-26は2部で、今季昇格 |
両方の目安で高いのはチェルシーとフォレスト
チェルシーとノッティンガム・フォレストは目安Aが100%を超え、人件費の4分の1を外した目安Bでも90%前後に残る。売上の大きいマンチェスター・シティ、リバプール、マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、トッテナムは、表の下の5つを占めた。上の表で目安Aが85%を上回るのは7クラブ、目安Bでは2クラブになるが、1〜2季前の決算を公式ではない算式で割った数字なので、公式の判定でグリーンを超えるという意味にはならない。
欧州に出るクラブには、 UEFAの70%が別にかかる
UEFAは比率を暦年で計算し、分母も独自に組み立てるので、同じクラブでもプレミアの比率とは別の値になる。
UEFAは2026年6月30日、2025暦年の比率が70%を超えたとして9クラブに罰金を科し、そのうち4クラブがイングランドのクラブだった。アストン・ヴィラは€2,250万(うち€1,500万は条件付き)で、重大な違反として2026/27のUEFA大会での新しい選手の登録にも制限がかかった。チェルシー、ニューカッスル、ノッティンガム・フォレストも罰金を受け、4クラブとも上の表の目安Aで上から7番目までに入っている。報道によれば、4クラブのうち今季もUEFA大会に出ているのはヴィラだけだ。
ラ・リーガは各クラブの上限額を公表している
アトレティコが戦うラ・リーガは、各クラブのLCPD(スカッド・コストの上限額)を公表している。2026年9月に出た2026/27の一覧では、アトレティコは約€3億6,129万で、1部ではレアル・マドリード、バルセロナに次ぐ3番目だった。LCPDとSCRの違いは、SCRのコラムの最後の章で比べている。