前半終了間際、サカが決めた一撃
プレビューで触れたとおり、アトレティコ・マドリードにとってこのエミレーツ・スタジアムでの90分は、今季CL初のアウェイ第2戦を同点状態で迎えるという新しい課題だった。アーセナルはキックオフからボールを握り、ギェケレシュを頂点にした4-2-3-1で左右に揺さぶる。アトレティコは4-4-2のブロックを組み、ジュリアーノとルックマンが両翼を閉じて中央への侵入を遮断した。ボール保持率54%対46%、xG 1.58対0.53。数字の上では、アーセナルが描いた試合だった。
アトレティコの前半最良の場面は8分に訪れた。オブラクのロングキックをジュリアーノが競り勝って落とし、グリーズマンとの連携の末に、フリアン・アルバレスが流し込もうとしたが枠を外れた。アルバレスは第1戦で足首を痛めており、この夜も万全とは言えない状態での出場だった。8分のシュート以外はサリバに抑え込まれ、Into the Calderónは4.5の評価をつけている。本来の輝きを見せる状態ではなかったが、シメオネはこの大一番で彼を外す選択をしなかった。
反対にアーセナルは前半のうちに何度か、アトレティコの背後を取りかけた。いずれもアトレティコの帰陣が間に合い、事なきを得た。しかし前半終了間際は違った。45分、サリバの右インサイドへの縦パスにギェケレシュが反応し、ゴール前へ走り込む。ここでハンツコの処理ミスも絡み、右サイドから形を崩された。オブラクが飛び出して対応を試みたが後退。ギェケレシュのクロスがファーサイドのトロサールへ渡り、トロサールがカットインからシュート。オブラクが弾いたボールを、詰めていたサカが左足で押し込んだ。
いくつかの要素が連なったゴールではあるが、ハンツコがギェケレシュへの縦パスを読んでインターセプトに出ながら足を届かせられなかった場面が、失点の出発点の一つになったことは否定できない。Into the Calderónはハンツコにも4.5をつけた。後半のボール保持時には貢献を見せたが、あの1プレーの代償は大きすぎた。
サカは試合後、「本当に美しい瞬間だった。この試合が僕たちにとって、ファンにとって何を意味するか、見てもらえたと思う」と語った。アルテタも言葉を選びながら、「20年ぶりに、クラブ史上2度目のチャンピオンズリーグ決勝に進めた」と20年ぶりの到達を噛みしめていた。
アトレティコ側に不満が残った二つの判定
後半に入り、アトレティコはギアを上げた。シメオネはテクニカルエリアを行き来し、一つ一つのプレーに全身で反応する。ボール保持は後半に限ればアトレティコ寄りに傾き、アーセナルが引いてカウンターを狙う時間帯が長くなった。
51分、サリバのバックヘッドが中途半端になり、ジュリアーノが反応してラヤをかわした。しかし後方からガブリエウが追い、シュート体勢に入ろうとした瞬間に両者の身体が接触した。ジュリアーノは倒れて激しく抗議したが、ジーベルト主審はPKを与えず、判定は変わらなかった。AP通信によれば、ジュリアーノは試合後に「シュートを打とうとしたときにバランスを崩された。それが自分の感覚だ。主審はVARを見に行くことすらしなかった」と振り返っている。カメラアングルによって接触の程度に対する印象は分かれるところであり、PK相当だったかどうかは判断が難しい。ただ、ジュリアーノは強い不満を持ったように見えた。
その約5分後に二つ目の場面が訪れた。プビルのクロスからグリーズマンがラヤのセーブを引き出したが、こぼれ球の処理でプビルとガブリエウが空中で競り合った。ジーベルト主審はプビルのガブリエウに対するファウルを先に認定し、その直後に起きたカラフィオーリとグリーズマンの接触は、すでに笛が鳴った後の出来事として処理された。グリーズマンの足にカラフィオーリのスパイクが入ったように見えた接触であり、元プレミアリーグ審判のマーク・クラッテンバーグはAmazon中継で、この場面について先にプビルのファウルがあったため、カラフィオーリとグリーズマンの接触はPKとして扱われなかった、という趣旨の解説をしている。アトレティコにとっては、プビルのファウル認定そのものに納得できないという二重の不満が残る判定だった。
ここで全体像に立ち返る。xG 1.58対0.53が示すように、決定機の質と試合運びではアーセナルが上回った。大会通算わずか6失点、ノックアウトステージのホームゲームで3試合連続クリーンシート。ライスはUEFAテクニカルオブザーバーからマン・オブ・ザ・マッチに選出されている。二つの判定がアトレティコにとって痛かったのは間違いないが、それだけで敗退を説明するべきではない。
57分の三枚替えとソルロートの逸機
57分、シメオネは一度に三枚を替えた。ジュリアーノに代えてカルドーソ、ル・ノルマンに代えてソルロート、ルックマンに代えてモリーナ。ジョレンテを右サイドバックに回し、中盤の構成を変えた。攻撃的なカードを切り、得点を取りに行く意思を示した采配だった。ルックマンは前半を通じて効果が薄く、タッチは重く、唯一のシュートも後半開始直後にブロックされていた。Into the Calderónは2.0という厳しい評価をつけている。生まれ育った地であるロンドンでのこの夜は、彼にとって報われない57分だった。
しかし交代後も決定機の数は増えなかった。66分にはグリーズマンとアルバレスも退き、バエナとアルマダが入った。しかし、終盤にかけてアトレティコの攻撃が明確に整理されたとは言い難かった。
86分、この試合におけるアトレティコ最大のチャンスが訪れた。バエナが左からクロスを入れ、ソルロートの前にボールが届いた。しかしソルロートはまともにボールを捉えることができず、空振りに近い形でチャンスを逸した。Into the Calderónは1.0という極めて厳しい評価をつけた。13回のデュエルで11回敗北という数字も添えられている。投入後に決定的な仕事を果たせなかったと言わざるを得ない。
筆者としては、ソルロートの逸機以上に、交代後の全体的な攻撃設計に課題を感じた。三枚替え直後の数分間には確かに勢いがあったが、それがシュートチャンスに変換される回数はごくわずかだった。後半のアトレティコはボールを持てた時間帯こそあったものの、アーセナルのブロックを崩す明確なルートを見つけられないまま時間が過ぎた。xG 0.53という数字は、チャンスの質と量の両面でアトレティコが不足していたことを物語っている。
グリーズマン、アトレティコでの最後のCL出場
グリーズマンはこの夜、アトレティコでの98試合目のチャンピオンズリーグ出場を記録した。オーランド・シティへの移籍が報じられているため、アトレティコでの最後のCLになる可能性が高い。2016年、ミラノでのCL決勝でPKを外してから10年。あの夜の傷を癒す機会は、エミレーツの芝の上で静かに閉じられた。
出場した66分間、グリーズマンは5-4-1の右MFとして守備に走り続けた。守備面での献身と、限られた攻撃機会に見せた質がこの夜のグリーズマンだった。30分すぎにはペナルティエリア手前でシュートを打てる場面がありながらジョレンテへのパスを選択した。
66分、シメオネはグリーズマンに代えてバエナを投入した。試合後には、グリーズマンもアウェイスタンドへ拍手を送った。チャンピオンズリーグの舞台におけるアトレティコとグリーズマンの長い物語は、この夜をもっておそらく最終章を迎えた。決勝でPKを外し、バルセロナへ移籍し、戻ってきて、再びこの舞台を目指し、あと一歩のところで届かなかった。
ラ・リーガ4位、5シーズン連続無冠のなかで
この敗退により、アトレティコは5シーズン連続で無冠に終わる見通しとなった。ラ・リーガでは第34節終了時点で4位、63ポイント。CLが最後のタイトル獲得の可能性だった。
一方で、このCLを失敗だけで片づける必要はない。10月のリーグフェーズでは、このエミレーツで0-4と叩きのめされた。そこから冬の移籍市場でルックマンを迎え、カルドーソが台頭し、敵地バルセロナを2-0で倒して準決勝まで勝ち上がった。結果だけでなく、チームとしての完成度を高めてきた大会でもあった。準決勝進出は競技面だけでなく、賞金や興行面を含めた財政的な意味も小さくない。
コケは試合後、「審判について話すつもりはない。彼もベストを尽くしたのだと思う。彼自身がどう裁くべきだったかを分かっているはずだ」と語った。判定への不満を飲み込んだうえでの、キャプテンとしての矜持がにじむ言葉だった。試合終了後、シメオネは選手たちとともにアウェイスタンドの前に立ち、歌い続けるファンに拍手を送った。AP通信が伝えたその光景は、この夜のアトレティコを象徴するものだった。
勝ったアーセナルは強かった。大会14試合無敗、今季41勝目のクラブ記録タイ、そしてノックアウトステージのホームゲームで3試合連続クリーンシート。5月30日、ブダペストのプスカシュ・アレーナで行われる決勝でパリ・サンジェルマンまたはバイエルン・ミュンヘンと対戦する。アトレティコにとっては、グリーズマンにとって最後になるかもしれない欧州の夜の重み、二つの判定が残した痛みといった記憶が長く残るだろう。それでもスタンドのファンは歌い続けていた。無冠のシーズンがまた一つ積み重なっても、コルチョネロであることを止める理由にはならない。
選手レーティング
先発
| 選手 | ItC | FotMob | 寸評 |
|---|---|---|---|
| オブラク | 4.5 | 6.7 | トロサールのシュートを弾いたが、詰めていたサカに決められた。後半は安定して守った |
| プビル | 5.5 | 7.4 | 前半は個人デュエル全敗。PK議論に巻き込まれた。後半は身体を張った。81分イエロー |
| ル・ノルマン | 6.0 | 6.7 | バレンシア戦の好調を受けて先発。トロサールへの寄せが遅れたが全体的には堅実。57分交代 |
| ハンツコ | 4.5 | 7.4 | 得点場面で縦パスへの対応が遅れた。後半のビルドアップでは貢献したが、代償が大きかった |
| ルッジェーリ | 6.0 | 7.2 | サカ、途中からマデュエケとの対応で守備に追われた。地上デュエル7回中4回勝利 |
| コケ(C) | 6.0 | 6.3 | パス数チーム最多。ファウルを受けながらリズムを整えた。90+5分イエロー |
| ジョレンテ | 6.5 | 6.5 | 前半のブロック2回。57分以降は右SBに移動しながら広範囲をカバーした |
| ジュリアーノ | 4.0 | 6.2 | 51分のPK疑惑の当事者。アルバレスへの落としなど可能性は見せたが苦戦。57分交代 |
| ルックマン | 2.0 | 6.1 | 前半は効果が薄かった。タッチが重く、唯一のシュートもブロックされた。57分交代 |
| グリーズマン | 6.5 | 6.5 | アトレティコでの最後のCL出場。守備に献身し、ラヤのセーブを引き出した。66分交代 |
| アルバレス | 4.5 | 5.9 | 足首負傷を抱えながら出場。8分のシュート以外は沈黙。サリバに抑えられた。66分交代 |
交代出場
| 選手 | ItC | FotMob | 寸評 |
|---|---|---|---|
| カルドーソ | 6.0 | 5.9 | 57分〜(←ジュリアーノ)。投入後すぐにボール循環を安定させた |
| ソルロート | 1.0 | 5.7 | 57分〜(←ル・ノルマン)。86分の最大のチャンスを逃した。デュエル13回中11回敗北 |
| モリーナ | 5.0 | 6.3 | 57分〜(←ルックマン)。ボールを前に運ぶ仕事は果たしたが期待されたシュート場面は作れず |
| バエナ | 4.5 | 5.9 | 66分〜(←グリーズマン)。86分のクロスで最大のチャンスを演出した |
| アルマダ | 4.0 | 5.8 | 66分〜(←アルバレス)。丁寧なタッチとパスを見せたが試合の流れを変えるには至らず |
※ItCレーティングはInto the Calderón、FotMobレーティングはFotMobより引用。