同点のままエミレーツに乗り込む──今季初の展開
第1戦は1-1。ギェケレシュが44分にPKを沈めてアーセナルが先制し、アルバレスが56分にPKで追いついた。いずれもPKからの得点であり、オープンプレーからの崩しではゴールが生まれなかった90分だった。グリーズマンのクロスバー直撃、アルバレスの直接FK、ルックマンのチャンスなど、アトレティコ・マドリードは後半に押し込む時間帯を作ったものの、勝ち越しには至らなかった。
今季のノックアウトステージを振り返ると、アトレティコが第2戦をこの条件で迎えるのは初めてである。プレーオフのブルージュ戦はアウェイ第1戦を3-3で引き分けたが、第2戦はメトロポリターノでの4-1勝利だった。ラウンド16のトッテナム戦はホーム第1戦で5-2と3点のリードを得てからロンドンに乗り込んだ。準々決勝のバルセロナ戦は敵地での第1戦を2-0で勝ち取り、ホーム第2戦は1-2で落としたが合計3-2で突破した。いずれもリードを持った状態か、ホーム第2戦という構図であり、合計同点でアウェイ第2戦に臨むのは今季CL初となる。
シメオネのチームにとって、過去を振り返ればこのような局面の経験はある。ただし今季に限っては、リードを持って守り切るパターンとは質的に異なる展開を求められることになる。アウェイゴール・ルールは廃止されているため、0-0のまま延長に持ち込む道は残る。しかし、アウェイで90分間を受けに回るだけでは主導権を握りにくい。少なくとも1点を取りに行く設計が現実的だろう。
10月のリーグフェーズでは、同じエミレーツで0-4と今季最大の敗北を喫した。あの日のチームと今のチームは別物だが、エミレーツのアーセナルが簡単な相手でないことだけは動かない事実である。
負傷者を抱えてもCL無敗を続けるアーセナル
アーセナルは今季CLで無敗を維持している。リーグフェーズからノックアウトステージを通じて、ホーム・アウェイを問わず一度も負けていない。そのうちエミレーツでの成績は5勝1分0敗であり、ホームではとりわけ堅い。守備の安定感とセットプレーへの強度を備え、今季のCLを勝ち上がってきたチームだ。
ただし前線のコンディションには目を配るべき要素がある。サカは5月2日のフルハム戦で先発復帰し、前半に決定的な仕事を見せた。後半は第2戦を見据えた温存的交代だったとアルテタは説明しており、痛みが消えて動きの制限がなくなった趣旨のコメントを残している。問題がなければ先発候補に入る。エゼもフルハム戦で先発しており、コンディション上の不安は報じられていない。
一方、ウーデゴールはフルハム戦のメンバーから外れた。今季は負傷に悩まされており、今回は膝の問題で第2戦の出場が不透明と報じられている。第1戦では先発したものの57分で交代した。アルテタは「火曜日に向けて全力を尽くす」と話したが、出場可否は最終的に当日まで不透明と見るべきだ。ハヴァーツは第1戦から欠場が続いている。筋肉系の負傷で出場については報道が割れており、今季は負傷で稼働が安定していない。仮に出場してもコンディション面での制約はありうる。カラフィオーリはフルハム戦で先発復帰済み。ティンバーとメリーノは引き続き欠場の見込みだ。
ギェケレシュは今季CL5得点。第1戦ではPKを獲得し、自ら決めている。セットプレーと空中戦でも脅威になる選手であり、アトレティコのDF陣にとっては90分を通じて警戒が必要な相手になる。ライスとスビメンディの中盤は構造的に安定しており、ここで圧倒されるとアトレティコは自陣で受ける時間が長くなりすぎる。
アルテタのチームはセットプレーへの執着と、50-50のボールに対する強度も備えている。シメオネ型のチームと性格が重なるだけに、中盤の攻防は消耗戦の色合いを帯びる可能性がある。
中盤で後手を踏まなければカウンターの道が開ける
アトレティコが得点を奪いに行く以上、単に前線へボールを急ぐだけでは足りない。中盤で押し返す時間を作り、ボールを持てる局面を増やさなければ、攻撃は単発に終わりやすい。中盤で質的優位を取られなければ、一方的にボールを保持される展開は避けられる。これが前提になる。
この文脈で期待したいのがジョニー・カルドーソだ。UEFA公式によれば今季CL9試合出場、471分、パス成功率79.7%、警告0枚。第1戦でもコケとともに中盤で先発し、強度とボール循環の両面で安定をもたらした。終盤まで計算できる体力があり、シーズン序盤と比べると不用意なボールロストが減ってきている印象がある。
バリオスは筋肉系の問題を抱えており、欠場濃厚の見方が出ている。バリオス不在の場合、中盤構成は第1戦と同様のカルドーソ+コケが本命になるだろう。バエナをスタートから起用する選択肢も残る。もうひとつの可能性として、ジョレンテを中盤に配置するパターンがある。第1戦ではジョレンテは右サイドで先発し、守備的なタスクを担った。仮に中盤にシフトする場合、空いた右サイドにはプビルやモリーナが入ることになり、前線との連携に変化が生まれる。
ライスとスビメンディとの中盤での攻防で後手を踏まないこと。そこから素早く前線へ展開すること。この二つが噛み合えば、カウンターでの得点経路が現実的に見えてくる。
モリーナの一撃と正面突破が効かない相手への崩し方
アーセナルの最終ラインは質が高い。サリバとガブリエウを中心に、正面からのコンビネーションや並みのクロスでは弾かれる可能性が高い。ボールを持って押し込めば点が取れるほど柔らかい守備ではない。
だからこそ、中盤での奪取からのカウンターは最も現実的な得点経路のひとつになる。守備が整う前に攻め切れるか。この一点が問われる局面が何度か訪れるはずだ。それと同時に、押し込んだ局面においても、アーセナルのDFラインを外側から脅かす手段があるかどうかが攻撃の幅を左右する。
ここで期待したいのがモリーナの攻撃面である。ミドルシュートはDFラインの前で構える相手を無効化してゴールを狙える武器であり、クロスの速度とカーブも高い水準にある。カウンターの仕上げだけでなく、押し込んだ状態で中央の連携が詰まったときにも、右サイドから別の角度を作れる存在だ。今季ラ・リーガでは2得点2アシスト。直近のバレンシア戦でもポスト直撃の遠距離シュートを放っている。正面突破とは異なるルートがあることで、アーセナルDFの対応パターンは増える。
ジュリアーノが腰の不調でコンディションに不安がある場合、モリーナを高い位置に配置する選択肢は有効に見える。DFの質が高い相手に対して、通常とは異なる角度からのシュートやクロスがあるかないかは、90分の中でチャンス創出の幅を左右する。
ルックマンの投入タイミングも焦点になる。第1戦では先発し、74分に決定的なチャンスを迎えたがラヤに阻まれた。スピードとドリブルでの局面打開は、途中出場でも試合の流れを変える力を持っている。
アルバレスとジュリアーノの状態がチーム構成を左右する
アトレティコ側の戦力状況を5月4日時点の報道から整理する。アルバレスは第1戦終盤にライスの下敷きになり足首を痛めて交代したが、軽傷との見方が多い。シメオネは試合後に「深刻でないことを願う」と話し、複数の現地報道は出場に楽観的な見方を伝えている。ジュリアーノは第1戦の前半にインカピエとの接触で腰を痛め、前半で退いた。出場可能の見込みとされるが、コンディション次第では配置の調整が必要になる。ソルロートは第1戦のウォームアップ中にハムストリング系の違和感を訴え、出場できなかった。復帰の見込みだが、スタメンかベンチかは不透明だ。
一方、バリオスとヒメネスはいずれも筋肉系の問題で欠場濃厚。ニコ・ゴンサレスも負傷で状態が不透明だ。ハンツコは第1戦に先発出場してPKを献上したが、軽いノックの可能性も報じられており状態確認は引き続き必要とされている。それでも第2戦のスタメン本命だろう。出場停止者はいない。
シメオネは5月2日のバレンシア戦(2-0勝利)で、自身の監督通算1000試合目でもあったが、主力の多くを休ませた。先発11人を全員入れ替え、イケル・ルケとミゲル・クボという若手がゴールを決めている。この試合に全リソースを集中する意図は明確だった。
起用面で注目すべきは、第1戦のアトレティコの布陣だ。オブラク、ジョレンテ、プビル、ハンツコ、ルッジェーリ、ジョニー・カルドーソ、コケ、ジュリアーノ、ルックマン、アルバレス、グリーズマンの11人が先発した。基本構造を維持しつつ、ジュリアーノの状態次第でモリーナの配置変更があり得る。
グリーズマンにとって、これはアトレティコで戦う最後のCLシーズンになる。今夏のオーランド・シティ移籍が発表済みであり、勝ち上がればブダペストの決勝がアトレティコで戦う最後のCLの舞台になる。敗退すれば、このエミレーツでの90分が最後のCL出場になるかもしれない。第1戦ではクロスバー直撃を含む精力的なプレーでUEFA公式のPlayer of the Matchに選出された。2016年のCL決勝でPKを外してから10年。決勝への道が残るのは、あと1試合だ。
10月の4-0とは別のチームがエミレーツに立つ
10月21日、リーグフェーズ第3節。アトレティコはこのエミレーツで0-4と叩きのめされた。チームの噛み合わせがまだ整っていなかった時期であり、今季最大の敗北として記録に残る試合だった。
あれから半年以上が経ち、チームは変わった。冬の移籍市場でルックマン、バルガス、メンドーサが加入し、前線と中盤のオプションが広がった。夏に加入していたカルドーソもCLの舞台で計算できる存在に成長した。戦術の成熟を経て、敵地でバルセロナを2-0で倒し、準決勝まで勝ち上がってきた。守るだけの試合で積み上げた成績ではない。
今季でも最も観戦の気合が入る1試合だ。リードを守るのではなく、得点を奪いに行く姿勢が問われるアウェイ戦。アトレティコにとって、今季のCLで最も新しい課題に挑む90分になる。キックオフは2026年5月5日火曜日、現地20:00 BST(日本時間5月6日水曜4:00)。エミレーツ・スタジアム、主審はダニエル・ジーベルト。
中盤のプレス強度と奪取位置、モリーナの攻撃参加とシュートの位置、アーセナルのセットプレーへの対応、試合終盤のシメオネの交代策。そしてグリーズマンのCLでの一挙一動。見届けるべきものが多い90分だ。勝者はPSG対バイエルン(第1戦はPSG 5-4リード、第2戦は5月6日アリアンツ・アレーナ)の勝者と、5月30日ブダペスト・プスカシュ・アレーナで決勝を戦う。