CL敗退から4日、決定力を欠いたホーム戦
アーセナルとのUEFAチャンピオンズリーグ準決勝で2戦合計1-2の敗退を喫したのが、5月5日のロンドン。そこからわずか4日後、アトレティコ・マドリードはホームにセルタ・ビーゴを迎えた。来季のCL出場権は確保済み。リーグ優勝の可能性もとうに消えている。シメオネが試合前会見で「来季はチャンピオンになるときだ」と語ったように、すでに視線は次のシーズンへ向いていた。
だからこそ、この試合には独特の難しさがあった。大きな目標を失った直後に、それでも全力で走り切れるか。チームの地力は、むしろこういう場面でこそ試される。試合後のシメオネは、CL出場権というクラブの目標は達成した一方で、リーグ優勝はなく、CL決勝にも届かず、コパもPK戦で敗れた状況に触れたうえで、「人間なのだから、この状況をマネジメントしなければならない」と語っている。モチベーション管理の難しさを、指揮官自身が隠さなかった。
4-4-2のスタメンにはホセ・マリア・ヒメネスの名前があった。2か月ぶりの先発復帰だったが、20分にボルハ・イグレシアスとの競り合いで右足首を痛め、ロビン・ル・ノルマンとの交代を余儀なくされた。ブーツと靴下を手に持ったままピッチを退く姿は、クラブでの最後の出場になる可能性すら感じさせるものだった。この試合も、ヒメネスを戦力設計の中心に置く難しさを改めて印象づけた。能力への疑いではなく、稼働率の問題である。
xG 2.04対0.13、最後だけが噛み合わなかった
数字だけを見れば、完勝してもおかしくない試合だった。ポゼッション56%、シュート20対3、枠内シュート4対1、敵陣ペナルティエリア内タッチ36対3、コーナーキック10対0。FotMobのxGはアトレティコ2.04に対し、セルタはわずか0.13。これだけの差をつけておきながら1点も取れなかったのは、シーズン終盤の疲弊だけでは片づけられない。ゴール前のワンタッチと判断が、最後まで噛み合わなかった。
序盤からアトレティコは攻勢をかけ、12分にはアレックス・バエナのボールを受けたアデモラ・ルックマンが左サイド寄りから左足を振り、シュートはバーを叩いた。28分にはアントワーヌ・グリーズマンがGKイオヌツ・ラドゥにセーブされ、後半立ち上がりの52分にはアレクサンダー・ソルロートがボックス内でのフリックから好セーブを引き出した。さらに57分には、バエナのクロスをルックマンがファーポスト付近で合わせたが、近い距離からのシュートはバーの上へ浮いてしまった。4度のビッグチャンスをすべて逸し、押し込むところまでは行けていた。ただ、最後のワンタッチが合わなかった。
そのなかで際立っていたのがバエナだ。Sofascoreレーティング8.4はこの試合の最高評価で、3本のキーパス、2つのビッグチャンス創出、xA(期待アシスト)1.43を69分間で記録した。中央に構えつつ右サイドにも流れて時間とスペースを作りながら、相手のディフェンスラインの裏へ際どいボールを通していく。そのプレースタイルは、かつてのロドリゴ・デ・パウルを思わせるところがある。シーズン終盤にこうした収穫が見つかることの意味は小さくない。
62分、少ない好機を仕留めたセルタ
62分、試合が動いた起点はコケのパスミスだった。中盤で奪われたボールがセルタのカウンターに転じ、ウィリオット・スウェドベリが中央を割るスルーパスを通す。マルク・プビルはスウェドベリのパスに完全に後手を踏み、ル・ノルマンも中央突破を止め切れなかった。フリーで抜け出したボルハ・イグレシアスは、前に出たヤン・オブラクの頭上を越すチップを冷静に沈めた。FotMobのxGはわずか0.07。低い確率のチャンスを、セルタの主将は高い精度で仕留めた。これが今季リーグ14ゴール目となり、ベティス時代の2022-23シーズンに記録した自身最多にあと1と迫る。
その後もアトレティコは攻め続けたが、立ちはだかったのがラドゥだった。Sofascore基準で4セーブを記録し、1.40ゴール阻止と評価されたGKは、交代で入ったミゲル・ジョレンテ(クーボ)のヘディングも弾き返した。セルタのバックラインも39回のクリアと6回のブロックで体を張り続け、シュートわずか3本、枠内1本で試合を閉じた。割り切った守備と一刺しのカウンター。セルタにとっては、理想に近い勝ち筋だった。
beINスポーツによれば、セルタがアトレティコを破るのは2018年9月以来。ホームでの敗戦に限れば、2007年6月以来となる。長い歴史を持つカードにおいて、数字上の珍事でもあった。
残り3試合で来季の材料を拾えるか
試合後、シメオネは率直だった。
「『決定力』という言葉に戻ろう。今日もチームは前半に3つ、後半に3つ、決定的なチャンスを作ったが、どれも決められなかった。セルタはクリニカルだった。ボルハは落ち着きと明確さを持って素晴らしいフィニッシュを決めた。選手たちはすべてを出し切った。それ以上は言うことがない」
さらにモチベーション管理について問われると、こう続けた。
「ピッチに出る以上、負けたいとは誰も思わない。我々はいつも通り戦う。もっと決定的であれば勝てた試合だった。今は物事が思うように運んでいない時期だが、リーグ開幕時はすべてが悪く見えた時期もあった。その後、CLやコパで競争力を見せ、リーガでは来季CL出場権を確保するだけの安定を保った。今はこの瞬間をマネジメントし、選手たちのそばにいて、火曜日に戦える状態にすることだ」
順位表を見れば、アトレティコは4位・勝ち点63で残り3試合。3位ビジャレアルとの差は5ポイント、しかもビジャレアルは1試合少ない。計算上は3位浮上の可能性が残るものの、現実的にはかなり遠い。来季のCL出場権はUEFAの欧州パフォーマンス枠によりスペインが5枠を獲得したことで確保済みであり、残る3試合の意味は順位そのものよりも、来季に向けた材料探しにある。
今季限りでオーランド・シティへ向かうグリーズマンの送別。61分の交代に不満を見せた姿は、メトロポリターノでの残り試合があと1つしかないことの重みを物語っていた。コケの去就についてシメオネは「まだ本人と話していない」と明かしており、結論は持ち越しだ。バエナの中央起用がもたらした可能性。カンテラ出身のクーボが途中出場で見せた積極性。素材はある。それを来季の設計にどう組み込むかが、オフシーズンの宿題になる。
シーズンのいつまでタイトルを争えるか。それはファンにとって、いつまで一喜一憂しながら観戦できるかと同義だ。コパ決勝のPK戦、CL準決勝の死闘。今季のアトレティコは最後のところで手が届かなかったが、少なくとも「届きそうだった」と思える時間を長く見せてくれた。来季こそ、5月の終わりまでリーガのタイトルの行方を追いかけられるシーズンであってほしい。シメオネが言う「チャンピオンになるとき」が来るために、この残り3試合を単なる消化試合にしないことが、その第一歩になる。
選手レーティング
先発
| 選手 | ItC | FotMob | 寸評 |
|---|---|---|---|
| ヤン・オブラク | 4 | 5.9 | 62分まで仕事なし。飛び出したところをチップで越されたが、それ以外に失点の責任を問うのは酷 |
| マルク・プビル | 4 | 7.1 | ファイナルサードへ10本のパスを送り、守備でもボール回収に貢献した。ただし失点場面でスウェドベリのパスに完全に後手を踏んだ |
| ホセ・マリア・ヒメネス | N/A | 6.6 | 20分で負傷交代。2か月ぶりの先発は右足首の痛みとともに終わった |
| ダビド・ハンコ | 4.5 | 6.8 | 後半序盤のコーナーから至近距離のヘッドを外す。パス成功率59/62は秀逸だが、失点場面でイグレシアスを捕まえ切れなかった |
| マッテオ・ルッジェーリ | 4.5 | 6.8 | 前半はルックマンとの連携で左サイドを活性化。ルックマン交代後は攻撃の推進力が落ちた |
| マルコス・ジョレンテ | 4.5 | 7.0 | 前半にエリア外からのシュートが枠を外れる。両サイドで走り続けたが、決定的な仕事には至らず |
| コケ | 4 | 7.2 | パス成功率75/79で試合のテンポを支配したが、失点起点のロストが致命的だった |
| アレックス・バエナ | 6 | 6.6 | この試合の最大の収穫。右にも流れながら中央から危険なボールを供給し続けた。69分での交代は早すぎたかもしれない |
| アデモラ・ルックマン | 5.5 | 6.9 | ドリブルで左サイドを切り裂き4本のキーパスを記録。12分にバーを叩き、57分にはバエナのクロスを至近距離で枠上に浮かせた |
| アントワーヌ・グリーズマン | 4 | 6.3 | 枠内シュート1本をラドゥにセーブされる。61分交代に不満を見せた。メトロポリターノでの残り試合はあと1つ |
| アレクサンダー・ソルロート | 5 | 6.2 | 5本シュートを放ちビッグチャンス2つを逸す。52分のフリックは見応えがあったが、ラドゥの壁を破れなかった |
交代出場
| 選手 | ItC | FotMob | 寸評 |
|---|---|---|---|
| ロビン・ル・ノルマン | 4 | 6.5 | 20分〜(←ヒメネス)。失点場面でスウェドベリとドゥランの中央突破を許した。守備の安定感を取り戻せなかった |
| ナウエル・モリーナ | 5 | 6.7 | 60分〜(←ルックマン)。失点場面で反応が遅れた。攻撃面でのインパクトも限定的 |
| ティアゴ・アルマダ | 3 | 6.5 | 61分〜(←グリーズマン)。ボールを失う場面が目立ち、試合に入れなかった。この日の最低評価 |
| オベド・バルガス | 4.5 | 6.2 | 69分〜(←バエナ)。ボールを動かし続けたが、攻撃のギアを上げるには至らず |
| ミゲル・ジョレンテ(クーボ) | 5.5 | 6.5 | 69分〜(←ソルロート)。左足のシュートは惜しくも枠外、ヘディングもラドゥに阻まれたが積極性は買える |
※ItCレーティングはInto the Calderón、FotMobレーティングはFotMobより引用。