xGは0.92、決めた2本だけが良かった

アトレティコ・マドリードは開幕戦でマラガを2-0で下した。スコアが動いたのは70分になってからだ。シュートは15本打っているが、そのうち7本はペナルティエリアの外から。FotMobがビッグチャンスと数えた3本はいずれも決まらず、xGは0.92にとどまった。

その0.92に対して、xGOTは2.64まで上がっている。xGが「シュートを打つまでの状況から、そのシュートが入る確率」を測るのに対して、xGOTは枠に飛んだシュートだけを取り出し、ゴールマウス内のどこへ飛んだかまで加味して得点確率を評価し直した数字だ。0.92が2.64になったのは、シュートを打つまでの形が良くない一方で、シュートそのものがとんでもなく良かったからだ。

守備のほうは、枠内シュートを終盤の1本しか許していない。前半終了間際にオブラクが2度続けて止めた場面はあったが、あの流れはオフサイドで、記録上のセーブにも数えられていない。この試合で引っかかったのは、その無失点に助けられて勝った攻撃のほうだった。

8年ぶりに1部へ戻ってきたマラガは、最初から低い位置にブロックを敷いてきた。こちらはそれを外す手を最後まで見つけられなかった。

ディエゴ・シメオネは試合後、「少しずつ良くなっていった。前半の仕事は相手を消耗させるうえで重要だった」と話し、後半から入った選手たちが試合を解決したと続けた。消耗させた前半が効いていたのは確かだ。ただ、70分と85分に起きたのは崩した結果ではなく、交代で入った2人の個人技だった。

イ・ガンインの左足と、バエナの直接FK

70分、右サイドで受けたイ・ガンインが中へ持ち込み、ボックスの外から左足を振り抜いた。起点はダビド・ハンツコが逆サイドへ振ったボールだ。パリ・サンジェルマンから加入して最初の公式戦がこれだった。33分の出場でシュート3本、xGは0.13しかないのにxGOTは0.89。少なくともこの試合では、狙ったコースへ打ち切る技術が数字にも表れている。

右サイドに左利きを置く形を、このチームで見た記憶がしばらくない。押し込みながら点が入らない試合は毎季何度も見てきた。マークを一枚外して中距離を決め切れる選手は、その手の試合でいちばん欲しくなる。引いた相手に手詰まりになるほど、彼の名前は先に出てくるはずだ。

85分のバエナは直接FKをゴール左上の隅へ決めた。Into the Calderónは8.5をつけ、この試合のチーム最高評価になっている。33分でチャンス創出2回、クロス成功2本、コーナー3本。昨季より中央でボールに触ろうとしているようにも見えた。シメオネはこの得点について「あのゴールは偶然じゃない。ゴール隅に決めている」と話している。同じ会見では、バエナにグリーズマンの代わりを求めているのかと聞かれ、「グリーズマンに似た誰かを探しているわけではない。全員が違う」とも答えた。

アルナウの折り返しと、16歳の先発

先発11人の顔ぶれは、見ていてプレシーズンの並びにかなり近い印象だった。W杯明けで主力が戻り切っていないとはいえ、開幕戦の11人としては想像以上に若い。

アルナウ・オルティスは57分の出場でチャンス創出3回、クロス成功3本。この日チームが通したクロスは全部で5本なので、そのうち3本が彼ということになる。28分にはエリア左のハンツコへ折り返し、シュートまで持っていった。ただしFotMobのドリブル成功は0、デュエルは2勝4敗だった。見た印象ほど、抜き切った記録は残っていない。武器と呼べるかどうかは、もう何試合か見ないとわからない。

左のダニ・マルティネスは本職がセンターバックで、トップチームでの公式戦はこれが2試合目になる。ドリブル成功4回、ボール回収8回、タッチ88回。プレシーズンでは見ていて不安の残る場面があったが、この日は危ない受け渡しがほとんどなかった。

最終ラインに入ったホルヘ・ドミンゲスは16歳241日での先発だった。記録が確認できる範囲でクラブ最年少の公式戦デビューと報じられている。これまでの記録は、2008年にコパ・デル・レイでデビューしたケコ・ゴンタンの16歳307日だった。内容そのものは苦しかった。37分に警告、前半のうちに2枚目が出ていてもおかしくなかった。シメオネはハーフタイムで彼をマルコス・ジョレンテに代えている。

中盤ではパブロ・バリオスがいつも通りだった。パス成功51本、インターセプト3回、ボール回収8回、ファウルは0。相手のカウンターになりかけた場面を、ファウルを使わずに手前で摘み取っていた。持てるし繋げる、を高い水準で毎試合やってくる。

ルックマンには、もう一段を求めたい

フリアン・アルバレスは招集を外れた。現地では、シメオネがまだ状態が足りないと判断したためだと伝えられている。試合後にはスタンドの一部からアルバレスへの侮辱チャントが飛び、シメオネはそれを問われて「我々の人たちには非常に敬意を持っている」とだけ答えた。去就が決まらないかぎり、あのチャントはまた飛ぶ。

その前線を任されたアデモラ・ルックマンに、もう一段が欲しかった。90分でシュートは2本、いずれも枠には飛んだが、チャンス創出は0、ドリブル成功も0。敵陣ペナルティエリア内で触ったのは4回だけで、デュエルは2勝5敗。74分にイ・ガンインのパスからエリア左で放ったシュートも、エレーロに正面で止められている。ItCは5.0をつけた。

今年2月の加入から半シーズン、昨季のリーガは622分で4得点だった。うち1本はPKだが、出場時間あたりの数字そのものは悪くない。去就で揉めている選手ではなく、まっすぐエースと呼ばれるべきなのは彼のはずだ。今季も、引いて守る相手を前に中央でボールを収める必要がある試合は何度も来る。そこで起点になれるかは、ルックマンに求めたい部分だ。

レーティング

先発

選手ItCFotMob寸評
オブラク77.0記録に残ったセーブは90+3分のラルビアへの1本のみ。それ以外に危ない形をほとんど作らせなかった。
ダニ・マルティネス77.5本職はCB。90分通して左を担当し、被ドリブル3回はあったが破綻はなかった。
ハンツコ7.58.7FotMobのMOM。タッチ113回、パス成功91本。75分のヘディングはバーを叩いた。15分に警告。
ル・ノルマン6.57.6前半は危うい対応もあったが、クリアランス8、インターセプト3。空中戦は3回すべて勝った。
ホルヘ・ドミンゲス46.116歳241日での先発。パス成功13本、タックル2回。前半だけで下げられた。
メンドーサ77.157分にエリア中央でバリオスから受け、エレーロの好セーブを引き出した。シュート3本のうち2本が枠内。
バリオス7.58.0タッチ71回、ドリブル成功3回。中盤で一人でボールを引き受け続け、被ドリブルは1回だけ。
コケ77.418季目の開幕戦。敵陣3分の1へのパス14本はハンツコに次ぐ本数。タックル2回、コーナー3本。
カルロス・マルティン5.56.1運動量は最後まで落ちなかったが、デュエルは1勝7敗でファウル4。シュート2本はいずれも枠外。
ルックマン56.8常に前線にはいたものの、味方との噛み合わせが最後まで悪かった。ボールが足元に収まらない時間が長い。
アルナウ・オルティス76.6左から中へ持ち込んでのヒールパスなど、仕掛けは目立った。敵陣エリア内でのタッチは5回。

交代出場

選手ItCFotMob寸評
ジョレンテ5.56.546分〜(←ホルヘ・ドミンゲス)。右で落ち着いてボールを持った。持ち出しを引っ掛けた場面もあったが、実害はなかった。
ジュリアーノ・シメオネ66.657分〜(←メンドーサ)。空中戦4勝、チャンス創出1回。決定的な仕事までは届かなかった。
イ・ガンイン87.957分〜(←カルロス・マルティン)。70分に先制点。シュート3本、ビッグチャンス創出1回、タックル3回。
バエナ8.57.557分〜(←アルナウ・オルティス)。85分に直接FK。チャンス創出2回、クロス成功2本、コーナー3本。
ヒュルマンド56.378分〜(←コケ)。試合を締める時間帯の投入で、タックル1回。

※ItCレーティングはInto the Calderón、FotMobレーティングはFotMobより引用。

4日後にビジャレアル戦が来る

次は8月23日日曜、ホームでのビジャレアル戦だ。アルバレスをはじめW杯から戻った選手たちが間に合うかを問われたシメオネは、「わからない」とだけ答えて会見を締めている。アレハンドロ・グリマルドはこの日ベンチのままだった。プレビューでは、補強がなければ左サイドはシーズンを通して彼のパフォーマンスにかかると書いた。その選手が開幕戦を座って終えている。

昇格組相手に勝ったこと自体を喜ぶ気はあまりなくて、見たかったのは中身だ。通ったクロスは90分で5本。エリア内からのシュートは8本あったが、ゴールになったものは1本もない。ラ・リーガの公式データでも、得点になった決定機は0本と記録されている。引いた相手をボックスの外から2本で片付けるやり方は、毎試合できることではない。次に同じ構えの相手と当たったとき、エリア内から1点取れるかを見たい。